医学部付属病院が「心臓の病気」をテーマに市民公開講座を開催しました

医学部付属病院では11月30日に伊勢原キャンパス松前記念講堂で、「心臓の病気」をテーマに市民公開講座を開催しました。当院では、地域の人々の健康増進に寄与するため定期的に公開講座を実施しています。今回は医学部医学科内科学系循環器内科学領域と同総合診療学系救命救急医学領域の医師2名が「心不全」と「不整脈」について、正しい知識を得ることで早期発見?早期治療につなげていただくことを目的に講演。患者や家族、地域住民の方々の約150名が参加しました。

初めに、救命救急医学領域主任の守田誠司教授が開会のあいさつに立ち、「心臓は一生で20億回から30億回休まずに動く唯一の臓器です。講座を通じてこの心臓に関する病気を理解し、適切な医療につなげてください」と語りました。前半は循環器内科学の伊地知健講師が、「心不全、あなたはどこまでご存知ですか?」と題して、何らかの原因で血液を体に送れない状態である心不全の基礎的な内容から解説。心筋梗塞患者の中で、動脈硬化や生活習慣病(高血圧、糖尿病、脂質異常症)を持っている人を指すAから、酸素を付けていないと苦しく、強心薬を服用しないと日常生活に支障をきたすDまでに分けられた「心不全とそのリスクの進展ステージ」について説明しました。「薬の進歩、カテーテル治療の進化、現場の医師の努力もあり、急性心筋梗塞で亡くなる人は神奈川県内では減少傾向を示していますが、心不全の患者は増加しています。心筋梗塞はステージBにあたりますが、助かってもステージCに進むと心不全になってしまうため、進展させないことが重要です」と語り、当院で昨年度から開設した脳卒中?心臓病等総合支援センターで患者や家族を対象に受け付けている無料相談の積極的な活用を呼び掛けたほか、多職種連携の下で運動療法に取り組む心臓リハビリテーションの効果、全国で最初に当院がプログラムを立ち上げた心不全教育入院の概要などについて詳しく紹介しました。

後半は救命救急医学の網野真理教授が、「致死的な不整脈の最新治療法 ~植え込み型除細動器の作動回数を軽減する!~」をテーマに講演。心臓超音波やホルター心電図といった代表的な心臓病の検査や、不整脈である“徐脈、頻脈、期外収縮”について説明。さらに脳梗塞を起こす危険な不整脈である“心房細動”の対策として、検脈や血圧計による脈拍計測の方法を解説し、「心臓を鼓舞し頑張らせる成分であるカフェインの過剰摂取や深酒は不整脈を増やすので避けましょう」と話しました。その後、命を奪う危険な不整脈である心室頻拍?心室細動の機序や治療法について触れ、本病院の研究グループが厚生労働省「特定臨床研究」の認定を受けて2019年度に国内で初めて実施した体外からの放射線照射治療の様子を動画で紹介。「この治療は低侵襲性で患者さんへの負担が少ないことが特徴です。心室頻拍を完全には抑え込むことは難しいですが、植え込み型除細動器の作動回数を減らす効果が確認されています」と語りました。

講演後は、循環器内科学の田中重光講師が来場者への謝辞を述べ、「心臓病は日進月歩の分野であり、私たちも日々、情報をアップデートしていかなくてはならないとの思いで診療や研究に臨んでいます。今回はその最新研究の一端をご紹介しましたが、聴講者の皆さまには、ぜひ周囲の方たちにも内容を広めていただければ」とまとめました。