2024年度品川キャンパス公開セミナー「ロシア内外情勢とウクライナ戦争」「気候変動と経済」を開催しました

品川キャンパスで11月30日に、2024年度品川キャンパス公開セミナーを開催しました。品川キャンパスは、国際?経営?観光?情報通信?政治経済(政治学科?経済学科)の5学部6学科の3?4年次生が学ぶキャンパスであり、そこでの学びや活動を地域に広く還元することを目的に、毎年セミナーを開催しています。今回は、上月豊久教授(国際学部国際学科)と大熊一寛教授(政治経済学部経済学科)による二テーマ?二部構成で行い、当日は、近隣住民や学生、教員など、約80名の方々が聴講されました。

第一部では、上月教授が「ロシア内外情勢とウクライナ戦争-プーチン大 統領の下でロシアはどの様に変わったか-」をテーマに登壇されました。上月教授は、外務省入省後に欧州局長、官房長を経て、2015年から2023年までロシアに特命全権大使として駐在し、対ロ外交の経験をもとに、プーチン大統領の人物像から、ロシアの内政、経済、外交の変化について解説されました。また、プーチン大統領がKGBに勤務していた時代から大統領府での経験などで培われた政治スタイルや支持率の推移についても触れられました。「目指す政治が内向きで排外主義になる一方で、経済はより自立的に高成長を続けている」と指摘し、2022年以降のウクライナ戦争の戦況が加速度的に変化している現状や、ロシアとウクライナの継戦能力を踏まえた戦況の見通し、和平の行方について解説されました。最後に、「ロシアはウクライナの領土の18%を占領した一方で、フィンランドやスウェーデンのNATO加盟や日本?オーストラリアの防衛費増大など戦略環境の大幅な悪化をもたらしています。アフガン戦争がソ連崩壊を招いたように、いずれウクライナ戦争はロシアを“孤立と衰退”へ導くこともあり得ます。ニュースなどで報じられることは、必ずよく考えましょう」と締めくくられました。

第二部では、大熊教授が「気候変動と経済-カーボンニュートラルと経済成長は両立できるか?-」をテーマに登壇されました。大熊教授は、環境庁でグリーン経済や脱炭素社会に向けた政策の企画立案に携わるとともに環境政策と経済成長の関係について研究を進めてきた経験をもとに、気候変動が進む中でカーボンニュートラルに向けて経済社会を大きく変革する必要性について、経済学の視点から解説されました。また、最近の気象災害と気候変動、アメリカのトランプ次期大統領の発言に対する懸念などについても触れ、気候変動に関する最新の科学的知見を評価する国際機関が、「人間の影響が温暖化させてきたことを疑う余地はない」と報告したことに言及されました。さらに、求められる対策や二酸化炭素排出量と経済成長との関係や両立についても解説されました。最後に、「日本はこれまで環境対策のコストを抑制してきましたが、経済は長期停滞を脱せなかった。国際的な経済環境は大きく変化しつつあり、環境対策は全体として進んでいくと思われます。“環境対策はコストがかかる”というこれまでの常識を問い直し、環境対策のプラスの側面に光を当て、政策を論じていくことが重要だと考えます」と締めくくられました。

会場からは、プーチン大統領の健康状態や側近との関係、また世界各国のカーボンニュートラルに対する温度差など、さまざまな質問が寄せられ、両教授が丁寧に答えました。聴講者からは、「どちらのテーマも今、最も知りたいこと。専門的な内容をわかりやすく解説していただき、よかった」「ロシアの内情についてニュースだけではわからないことも知ることができ、これからは報道などをさらに注意深く考えていきたいと思います」といった感想が寄せられました。