産官学連携センターでは、10月11日から13日までパシフィコ横浜で開催された「BioJapan 2017」(主催:BioJapan組織委員会ほか)に研究シーズを出展しました。創薬、個別化医療、再生医療診断?医療機器、ヘルスケアなどの分野におけるバイオ産業のオープンイノベーションを加速させることを目的として毎年開かれているもので、30カ国から850社以上が参加。本学からは、医学部の井上茂亮准教授(外科学系救命救急医学)が、「自己免疫疾患のオーダーメイド創薬を目指して―疾患関連HLA発現細胞を用いた抗原提示阻害剤のhigh-throughputスクリーニング法の確立―」をテーマに、医学系大学産学連携ネットワーク協議会(medU-net)特別ブース内にポスター展示し、12日にはプレゼンテーションも行いました。
井上准教授らの研究グループは、関節リウマチや多発性硬化症といった自己免疫疾患に関与する特定の遺伝子型のHLA(白血球抗原)を発現する細胞(HLA発現細胞)を作成。さらに、「96 well プレート」上で同細胞と疾患の原因となる抗原ペプチド断片を結合させ、両者が結合したときにのみ蛍光を発する機能を持たせることに成功しました。この結果、プレートリーダーで96個の検体プレートを1枚あたり数秒で分析することを可能にしました。これにより、多数の治療薬の候補化合物がHLA発現細胞と抗原ペプチド断片の結合をどの程度阻害できるかを簡便かつ迅速に見分けられる「ハイスループット?スクリーニング系」を構築。患者個人のHLA遺伝子に基づいたオーダーメイドな免疫抑制剤の開発を可能にしました。
展示ブースには、連日、多数の企業の研究者らが訪れ、井上准教授は今後の展開などについて意見を交換するとともに、本研究の評価系に用いたHLA安定発現3T3細胞株やHLA発現プラスミドベクターなどの譲渡についてもアピール。「多くの化学?製薬系の企業などに注目していただき、手応えを感じています。本研究は、医学部と工学部の連携による成果。今後も学内外の研究者や企業と協力してさらに研究を進めていきたい」と話しています。