SAS特別講演会が開催されました

湘南キャンパス19号館で6月28日に、Society of Advanced Science(SAS)による特別講演会(協賛=本学大学院工学研究科)が開かれました。SASは本学を中心に結成された企業経営者や研究者、地域産業界らが一体となって分野の垣根を越えて協力し、科学技術の将来を託す学生や若手技術者の育成を通じて社会貢献を目指す学術団体です。今回は、今年度第1回の特別講演会として東京医科歯科大学生体材料工学研究所前所長、名誉教授の塙隆夫氏が「医療機器マテリアルの生体機能化」と題して講演。本学の教職員や大学院工学研究科の大学院生、工学部材料科学科の学生、SAS会員ら約40名が参加しました。

初めにSASの山田豊理事長(本学名誉教授)があいさつとともに講師のプロフィールを紹介。続いて登壇した塙氏は、医科歯科大生体材料工学研究所の研究成果を基にしたさまざまな製品の紹介をはじめ、生体医療、福祉材料として用いられる金属やセラミック、高分子材料などの概要を説明。それぞれの材料の医療分野における活用方法や特性を解説し、「すべての材料には長所と短所があり、自分の使う材料の短所を把握して研究を進めることが大切です。また、材料の性質は結合によって決まり、その基本的性質はなかなか変わりません」と語りました。そのうえで、歯科インプラントや心臓ペースメーカーなど体内に埋植して使用する材料の耐久性や安全性を見極めることの重要性を強調。抗菌性の高い金属材料の製造過程における表面処理の具体的な方法、機能分子電着機構の解明、硬組織適合向上のための表面処理の変遷、表面構造がhMSC(ヒト間葉系幹細胞)分化に及ぼす影響、歯科インプラント向けのMRI対応低磁性Zr合金の開発、低磁性ジルコニウム合金の製造、加工プロセスの確立といった最新の研究における課題と成果に触れ、「医師のニーズに基づいて新しい材料を用いた医療機器を開発しても医療経済の面で利益が出なければ実用化はされません。事前の調査や覚悟を持って開発に取り組む必要があります」と指摘しました。

講演終了後には質疑応答も実施。「ジルコニアの医療機器への応用における3Dプリンタ活用の可能性は?」「埋植医療機器の接合における圧縮への考え方を教えてください」など多数の質問や意見が寄せられ、活発な議論が展開されました。