bet36体育投注_bet36体育官网app-在线*开户ティーチングクオリフィケーションセンター(TQC)では12月16日に湘南キャンパスで、公開シンポジウム「身体の声に耳を傾けて 学校?博物館におけるユニバーサルな学びの可能性」(共催:bet36体育投注_bet36体育官网app-在线*开户文明研究所、松前記念館)を開催しました。TQCでは2013年から、誰もが楽しめる「ユニバーサルミュージアム」をテーマに連続講座やワークショップを開いてきたほか、視覚障害者はもちろん目の見える人も「触覚」で展示を楽しむ「ハンズ?オン(触る)展示」を行うなど、博物館の新たな可能性を切り拓く活動を展開してきました。10年目を迎える今回のシンポジウムでは、ユニバーサルの領域を学校教育に拡大して議論を展開。学生や教職員、市民ら約100名が参加しました。
最初に、視覚障害を持ちながら新潟県の高校で教員を務めた栗川治氏(立教大学コミュニティ福祉学部兼任講師)が、高校の現場では障害がある教員が少ない現状をはじめ、「障害」に関する世界的な議論の潮流について自らの経験を交えながら講演しました。1970年代以降、「心身の障害は社会が生み出しているものである」との考えが一般的になっており、「人間の自立は人々が助け合いながら自己実現をしていくことを指すようになっている」と解説。「教育とは、さまざまな状況にある人とどう接するのかを学ぶことが根底にある。その中に障害のある教員が入れば新たな発見につながると思う」と語りました。
次に、広瀬浩二郎氏(国立民族学博物館教授)が、学芸員の仕事の多様性を拡大するうえで、視覚障害者が果たす役割について語りました。近代以降、人々が目を通して得られる視覚情報に頼りすぎているという現状認識に基づき、「触覚」をはじめとする視覚以外の感覚をフルに使いながら鑑賞する姿勢を取り戻すことが大切であると説明。戦後日本の社会福祉の先駆者である糸賀一雄氏の「この子らを世の光に」という言葉を引用しながら、さらに一歩進んで「この子らから世に光を」に進みたいという考えを提案し、「触覚に依拠している私たちと視覚に依拠している人たちが協力することでミュージアムや社会のあり方の新たな可能性が見えてくる余地がまだたくさんあると考えている」と述べました。
また最後に、本学文明研究所所長の田中彰吾教授が、現象学の知見をベースに、人間の身体と感覚の関係について講演しました。先行研究に触れながら、感覚は「身体と環境が出会う場」の中で生まれるものとされていると紹介。「従来の型にはまらず、それぞれ違った特徴を持つ人たちが思い思いに身体を使いながら意味のある学びをできる環境をどう用意するかが課題となる」と話しました。
講演後のパネルディスカッションでは、TQCの大島宏次長と篠原聰准教授による司会で、原礼子氏(国際基督教大学非常勤講師)とTQCの西本健吾特任助教も登壇。参加者の質問を交えながら、環境を工夫することで生まれる教育の可能性や教育現場のインクルーシブ化への対応、「障害」と「障がい」の表現の違いに対する当事者の考え方などについて議論しました。
参加した学生からは、「以前、栗川先生と広瀬先生の講義をオンラインで受けましたが、今日は直接質問ができてとてもうれしかった。世の中にはまだまだ健常者が上から目線で障害者を見ている風潮が払拭できていないことに気が付くなど、今後の博物館や学校がどうあるべきかを自分なりに考えるヒントをたくさん得られました」「これからの学校は、視覚や聴覚に障害がある人も含めて多様な特性を持つ人が一緒に学ぶようになっていくと言われています。今日の話を参考にして、自分が将来教員になった時にどのようにしていけばいいのかを考えていきたい」「視覚障害者でも楽しめる展示会やイベントがあることは、当事者の間でもまだまだ知られていないのが現状です。触って初めて発見できることも多く、そうした情報をどう発信していくのかも大きな課題だと感じました」といった声が聞かれました。