公開講演会「骨から探る古代の食生活 -考古科学が解き明かす最新成果-」を開催しました

人文学部人文学科では6月29日に、静岡市?クーポール会館で公開講演会「骨から探る古代の食生活 -考古科学が解き明かす最新成果-」を開催しました。人の骨には膨大な情報が詰まっており、考古科学の分野では近年、遺跡から発掘された人骨を最新の装置を用いて分析することで、新たな知見が次々と得られるようになっています。今回の講演会は、先端科学と考古学の学際的研究で明らかにされた古代人の食生活や食文化、先史時代の人々の暮らし、動物考古学からみた古代日本の動物利用の方法などについて専門家が最新の研究成果をもとに解説するもの。文部科学省の科学研究費助成事業「学術変革領域研究(A)」に採択を受けた「中国文明起源解明の新?考古学イニシアティブ」「日本列島域における先史人類史の統合生物考古学的研究―bet36体育投注_bet36体育官网app-在线*开户の考古学改新―」との共催として実施し、考古学に関心のある市民ら約38名が参加しました。

当日は、まず本学科の丸山真史准教授が趣旨説明を行い、引き続き「古代日本の動物利用」と題して講演。遺跡から出土する動物の骨や歯を分析することで、人と動物の関係を明らかにして文化や社会を読み解く「動物考古学」について紹介し、さらに「静岡の遺跡にみる肉食」として、静岡市の「登呂遺跡」や「駿府城内遺跡」の発掘調査から出土したカツオの脊柱骨やイルカの頭蓋骨から、現代にいたるまでの海に関連した食文化を考察。さらに、家畜と肉食に関する日本独自の食文化にも言及しました。続いて、中国?蘭州大学歴史文化学院考古学及博物館学研究所教授で、金沢大学人間社会研究域附属古代文明?文化資源学研究所客員教授の菊池大樹氏は、「いにしえの中華料理」のテーマで、多様な資料から考察される中国各地の食文化の変遷を解説しました。

後半は本学科の日下宗一郎准教授が「静岡の縄文?弥生人の食生活」と題して講演。同位体分析による先史人骨の年代?食性復元?移動の研究を紹介し、縄文時代の人々の狩猟活動や植物の採集、漁労といった暮らしの様子から、これらを解明するための「炭素?窒素安定同位体分析」と呼ばれる人骨の解析方法について専門的に解説しました。さらに、静岡県内の複数の縄文遺跡や弥生遺跡から出土した人骨の炭素?窒素同位体分析の結果について説明し、弥生人の食生活は、陸上哺乳類やコメなどの陸上生態系に由来する食物資源をエネルギーにしていたと示唆される調査結果を紹介しました。最後に、筑波大学人文社会系准教授の板橋悠氏が「メソポタミア文明より、前の暮らしを骨から探る」をテーマに講演。メソポタミア文明誕生に至るヒト社会の複雑化の過程を明らかにする研究の概要から、現地調査の様子まで詳細を語りました。講演後には質疑応答の時間も設け、参加者から多数の質問が寄せられました。