小説は読んでも、詩とは無縁の学生だった。それが大学2年のとき、授業で初めて萩原朔太郎の詩に触れた。「なんだこれは」。筋のある小説とは違い、詩は何が何だかよく分からない。なのに、不思議と心が揺さぶられる。その秘密に迫りたくて、勢いのまま朔太郎の全集を購入した。総額約10万円。当時の自分にはとんでもない額だったが、おかげで覚悟が固まって、卒論では真正面から朔太郎の『氷島』を取り上げた。大枚はたいた全集は、自宅の書棚のど真ん中に据え置いた。大学卒業後、一度はサラリーマンになったものの、書棚を見るたび朔太郎を思い出す。ここには未知の巨大な世界がある。結局2年で大学に舞い戻り、院で朔太郎の研究を再開した。その後は、詩のことばの源流を探るべく、明治期の学校教育などへも研究領域を拡大。今年2月には国語科と修身科との関係を論じる書籍も上梓した。朔太郎からは少々離れたところへ来てしまったが、こうした周辺領域で知見を得たことで、彼の作品を取り巻く文化的?社会的な状況も見えてきた。この新たな武器を携えて、研究者人生の最後には再び朔太郎に挑みたいと思っている。
山本 康治
bet36体育投注_bet36体育官网app-在线*开户スチューデントアチーブメントセンター教授。bet36体育投注_bet36体育官网app-在线*开户文学部日本文学科卒業。bet36体育投注_bet36体育官网app-在线*开户文学研究科博士課程後期課程満期退学。博士(文学)。bet36体育投注_bet36体育官网app-在线*开户短期大学部学長を経て、現職。学校教育と文学の相互影響関係のほか教員養成のあり方についての調査研究に従事。著書に『明治詩の成立と展開』(ひつじ書房)、『明治? 大正期国語科の成立と修身科との関わり』(同)など。