海洋学部の教員が清水港内の海底に日本酒を沈めて熟成させる「海底熟成酒」の研究開発を進めています

海洋学部の教員が、清水港内の海底に日本酒を沈めて熟成させる「海底熟成酒」の研究に取り組んでいます。7月27日には、株式会社鉄組潜水工業所の協力を得て、清水港内の水深2.5mの海底に455本の日本酒を貯蔵しました。この試みは、「沈没船など海底から引き揚げられたお酒はおいしい」という古くからの伝承をもとに、海底に沈めた酒の変化を調査し、静岡県内の酒造業者らと連携して新たな特産品の創出につなげることを目的に昨年度から実施しているものです。水産学科の後藤慶一教授と海洋生物学科の鉄多加志准教授、両教員の研究室に所属する学生が参加しています。

後藤教授らは、昨年度実施した沈酒熟成酒の官能評価会後に、香気成分やアミノ酸をはじめとした成分分析も実施。ソムリエによる官能評価と分析結果は完全には同調しなかったものの、海底に貯蔵することで花や果物などの香りが高まるだけでなく、アルコール臭が下がり、酸味が減少することが分かりました。また、本研究に参画する三和酒造株式会社では、最盛期とされる平成初期に比べて日本酒の売り上げが3分の1に下がっている中、海外への輸出量は直近10年で3.5倍に増加しており、特に単価の高い特定名称酒が人気を博している。静岡市清水区両河内で栽培した幻の酒米「亀の尾」で醸した日本酒「臥龍梅 両河内亀の尾」を、清水港内で海底熟成することによって高付加価値をつける「清水テロワール」を計画。有限会社リカーショップおきつと本学が協力し、この研究を通じて商品化に向けた取り組みも開始しました。

さらに今回は、静岡県の企業や団体の取り組む研究をサポートする「B-nest」(静岡市産学交流センター?静岡市中小企業支援センター)から研究助成金も受けており、昨年度の100本を大きく上回る455本の日本酒を確保。後藤教授による指導の下、学生たちは海水侵入を防ぐために瓶口をロウで固め、遮光のため瓶全体にアルミホイルを巻くなどして準備を進めてきました。27日の作業では、プラスティックコンテナに入れて清水港の海底に沈めました。引き上げは11月と来年8月、11月の3回を予定しています。後藤教授は「テロワールによる日本酒製造は全国的に行われていますが、同じ地域の海で海底貯蔵する例はありません。熟成原理はまだ未解明なので、3回の引き上げを通して調査していきます。清水の山と海を利用した日本酒は、新しいジャンルの創出が考えられるので、地域活性化に大きく貢献できるのではないかと期待しています」と話しています。

なお、11月に引き上げを予定している海底熟成酒は、三和酒造と(有)リカーショップおきつで販売する予定です。