農学部バイオサイエンス学科の米田一成准教授が研究を進めてきた、藍染めの染色の過程で重要な役割を担う「インジゴ還元酵素」の酵素化学的機能と結晶構造解析の研究結果がこのほど、国際的な学術誌『International Journal of Biological Macromolecules』に掲載されました。共著者には、これまで米田准教授の研究室で卒業研究に取り組んできた学生や大学院生たちの名前も含まれています。
酵素化学や酵素工学、構造生物学などが専門の米田准教授は、日本で伝統的に行われてきた藍染めの一段階である「藍建て発酵」の際に、本来は水に溶けない染料のインジゴが「インジゴ還元酵素」の働きによって水溶性となることで、美しい染色が可能になる仕組みに着目。香川大学農学部や大阪工業大学工学部と共同研究で、この酵素の機能や構造の分析に取り組んできました。従来の染色技術を科学的に明らかにすることで、効率的な染色を可能にすることを目指しています。
米田准教授は、「私が学位を取得した徳島県では、『すくも』を使った阿波藍染が盛んであり、伝統産業として身近な存在でしたが、その藍染めの過程には科学的に解明されていない、いわゆる”ブラックボックス”の部分が多いこともあり、約6年前から研究に取り組んできました。酵素の機構やその働きを生化学的視点から明らかにしたことで、これまで染色に携わる職人が気候や温度を見極め、その経験と勘を頼りにしていた作業を効率的に進めることができるようになると考えています。今後も染色技術の発展に寄与していきたい」と話しています。
またほかにも、米田准教授が香川大学農学部と大阪工業大学工学部、大阪医科大学医学部との共同研究で取り組んできた、トマトを枯らせてしまう植物疫病菌に対して特異的な農薬創製を目指して行った「L-スレオニン脱水素酵素」に関する研究成果も学術誌『Enzyme and Microbial Technology』にアクセプトされています。
論文は下記から参照できます。
『Structural and biochemical characterization of an extremely thermostable FMN-dependent NADH-indigo reductase from Bacillus smithii』
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S014181302034294X
『Catalytic properties and crystal structure of UDP-galactose 4-epimerase-like l-threonine 3-dehydrogenase from Phytophthora infestans』
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0141022920301204