建築学科の山川教授が「病院建築のZEB化に向けた研究」で2つの賞を受賞しました

建築都市学部建築学科の山川智教授がこのほど、空気調和?衛生工学会の「振興賞技術振興賞」と一般財団法人ヒートポンプ?蓄熱センターの「ヒートポンプ?蓄熱システム運転管理等の改善事例優秀賞」を受賞しました。いずれも山川教授がこれまで取り組んできた、北海道?帯広厚生病院での熱回収ヒートポンプを用いた省エネルギー化に関する研究が対象となっています。

山川教授はかねてより「病院建築のZEB化に向けた研究」に取り組んできました。建物で消費する年間のエネルギー収支を0にすることを目指す「ZEB」(Zero Energy Building)は、オフィスビルなどを対象にした研究や実装は進んでいる一方、エネルギー消費量の多い病院では難しいとされてきました。山川教授は日本ファシリティ?ソリューション株式会社などと協力し、2018年11月に新築移転した同病院での実証に着手。24時間365日稼働し続けるCTやMRIなどの検査機器が発する熱や、冬季も冷房?冷却している手術室、厨房の冷蔵?冷凍庫などの排熱を集め、「熱回収ヒートポンプ」で温水に変換し、風呂やシャワー、厨房の給湯、病室の暖房などへの活用を図りました。この熱回収ヒートポンプの導入により、厳冬期には-20℃を下回る国内有数の極寒地域である帯広において、冬季(2020年12月~21年3月)の熱源設備のエネルギー消費量を約25%削減することに成功しました。また、病院全体の年間エネルギー消費量についても、道内の同規模病院の平均値を16%下回りました。

「地域の災害拠点病院では3日程度自立できるよう発電機や燃料を備蓄していますが、近年は豪雨などの災害が頻発し、被害も甚大化しています。復旧までに長い時間がかかったとしても、エネルギー消費量を抑えられれば、備蓄で稼働できる時間を伸ばすことができます」と山川教授。「気候変動の緩和策としてのカーボンニュートラル化と、適応策としての災害対応力強化を両立する病院建築のZEB化技術の開発に向け、今後も研究を続けていきたい」と話しています。