建築都市学部では4月16日にオンラインで、建築都市学部オープニングセミナー「『Without Borders/ 境界を越えて』―ランドスケープが描く境界なき未来地図―」を開催しました。本セミナーは、今年4月に開設した建築都市学部の理念や教育?研究活動を周知するとともに、建築にまつわる企業や行政、大学などの研究機関の識者らとそのあり方を考える機会とすることを目的としたものです。「Linkage 人?建築?都市を○○でつなぐ」を共通テーマに、昨年度から23年度まで合計9回の講演を企画しており、第4回目となる今回は株式会社ランドスケープ?プラス代表取締役で、ランドスケープアーキテクト連盟副会長を務める平賀達也氏を講師に招きました。
平賀氏は、はじめに現代社会が抱える問題を交えて、ランドスケープアーキテクチャーについて解説。「世界の人口は年々増加していますが、地球上にある資源は限られており、それを巡り国家や地域間で争いが続いています。争いで傷ついた土地や失われる自然に対して、“どのようにして都市に自然を取り戻し、快適と安全が両立した環境をつくり出すのか”といった自然資本の視点から土地の価値を考え、その持続性に向けて建築するのがランドスケープアーキテクトであり、この観点から理想の社会について考えるのが私たちの仕事です」と話しました。続いて、高度成長期に橋やダムなど建設してきた日本が、近年は少子高齢化で税金収入に期待できないため新しい建築物を作れていないという現状や環境変動期における気象災害リスクには地理学や地誌学を理解することが未来では重要という見解を力説。「私たちが行うランドスケープアーキテクトの視点を持ち合わせた活動は、自然循環を前提に次の1000年の社会を見据えているかという視点が重要。その上で地域的性質を理解し、快適性と安全性を備えた基盤を見定める必要がある」と語りました。その後、自然循環型まちづくりの事例や持続的な価値の提供方法など、ランドスケープ?プラスの価値提供について解説しました。
講演後には、本学部の岩崎克也学部長の進行で質疑応答も実施。学生からは、「今と10年前で環境が大きく変わったと思うのですが、建築に対する考え方や向き合い方にも変化はありましたか」「自然を対象にしたまちづくりは終わりがないと思うのですが、平賀さんにとってのゴールはあるのでしょうか」といった質問が多数寄せられ、平賀氏が丁寧に回答しました。最後に学生たちに向けて、「どのような空間が理想的なのか、それが私の世代で実現できるものなのかも分かりませんが、長期的に考える視点や考え方を次の世代へとつなげていくことが重要。目指すべき社会の未来像は、皆さんそれぞれにあるので、自分の思うプロジェクトを追い求めてください」とメッセージを送りました。