大学院工学研究科2年次生の松本乙希さん、後藤龍之介さん、北村陸さんのグループが、4月25日にオンラインで開催された「第9回宇宙建築賞」で銅メダルに選ばれました。同賞は、本学建築都市学部建築学科の十亀昭人准教授がキュレーターを務め、宇宙飛行士の山崎直子氏や宇宙ビジネスの専門家らの協力を得て実施されており、宇宙建築の周知とアイデアの振興、発信などを目的に開催されています。今年度は「FIRST PLACE」をテーマに月面居住の最初期の一歩目となる施設案を募集。建築物の外形は直径4mの円筒形状で、軸の長さは4m以内、全てのパーツは一度、この空間内に収まった状態で月面に移動できるといった規定が設けられました。
松本さんらは十亀准教授が担当する昨年度秋学期の授業「空間計画特論」で、「布を重ね、月を着こなす」と題した作品を制作。十亀准教授から宇宙建築についての講義を受け、課題や敷地状況の分析、アイデアの着想、形を考える「エスキース」を重ねてきました。後藤さんは、「雨をしのぐために屋根をかけ、風を遮断するために壁を立てた竪穴式住居から着想を得て、月に建てる住居には紫外線や温度変化から身を守るシェルターの役割が必要だと考えました」と振り返ります。さらに、船外活動で着用するために気密性や断熱性など役割の異なる14層の布地でできている宇宙服に着目し、それを拡張して建築に応用するアイデアを検討。気圧や気温、地形といった地球と異なる環境にも考慮し、北村さんは、「布地であればクレーターにもフィットさせやすく、真空状態、熱環境、宇宙塵などから身を守れます。層によって環境の異なる空間をつくり、月の環境を感じられる設計を目指しました」とコメント。洋服を引き出しにしまうように、布を畳んだり、丸めたりして直径4mの円柱内に収納し、月面で広げて空気をはらませ、10倍から20倍の建築物として展開する案をまとめました。
松本さんは、「建築物はどのような環境にも順応させて作る必要があります。人間が月に行こうとしている以上、近い将来、建築物は必ず必要になります。学生のうちにそういった経験ができてよかった」と語りました。十亀准教授は、「宇宙建築というと重厚感のある建物を想像しがちですが、彼らは布を使った斬新なアイデアをよく形にしてくれました。企業も多く参加する中での銅メダルは立派」とたたえました。審査員で宇宙ビジネスコンサルタントの大貫美鈴氏からは、「宇宙服のように布を重ねることによってプライバシーを確保しながらも『他人を感じる』空間、楽しい声が聞こえてくるような空間を布が見事につくっていました」といった講評が寄せられました。