建築都市学部の十亀昭人教授が3月15日に、東京都港区の建築会館で開催された「シリーズ『建築のみかた』第15回:宇宙と建築『宇宙居住への挑戦』」(主催=日本建築学会関東支部)で講演しました。このシンポジウムは、アメリカ?中国の宇宙機関を中心に研究開発が急速に発展している人類の宇宙居住をめぐり、その課題や技術的な展望、サスティナブルな宇宙開発の方策などを検討し、さまざまな角度から宇宙建築を考える目的で開催されたものです。
シンポジウムは二部構成でオンラインでも配信されました。前半は十亀教授をはじめ、宇宙研究者でJAXA(宇宙航空研究開発機構)宇宙科学研究所の春山純一氏、宇宙ビジネスコンサルタントでスパークス?イノベーション?フォー?フューチャー株式会社エグゼクティブバイスプレジデントの大貫美鈴氏がそれぞれ講演。春山氏は、過酷な環境である月面ではなく地下空洞に居住することの可能性について話し、大貫氏は、アメリカの実業家、イーロン?マスク氏やジェフ?ベゾス氏が取り組んでいる宇宙開発ビジネスについて紹介しました。
十亀教授は、研究テーマである宇宙空間の展開構造物について動画で説明し、開発の歴史や分類について解説。「狭い宇宙ステーションでも無重力状態により居住空間を立体的に使えることで実際より広く感じることに示唆を受け、地上の建築への応用を視野に入れて研究に取り組んでいます」と話しました。また、長く携わってきた宇宙建築の歴史についてひも解き、1990年代に始まった大手ゼネコン同士の連携や大学?学生らの研究組織の立ち上げといった活発な活動が、バブル崩壊の影響で中断を余儀なくされた状況に言及。そうした状況を改善する継続的な活動のひとつとして、自身が中心となって10年前に立ち上げ、キュレーターを務める「宇宙建築賞」の意義や概要について紹介し、受賞作品の変遷から宇宙建築の可能性に対する社会的な要請の変化などについても解説しました。
続いて「第10回宇宙建築賞」の表彰式も実施されました。今回の課題は「宇宙ビジネスと建築」で、本学の大学院工学研究科の2年次生2グループが受賞しました。銀メダルは、「MOONBALLOON ~風船型探査機ムンバルンを用いた月面縦孔ビジネスの提案~」をテーマに提案した都丸優也さんと大石真輝さんが、銅メダルは「空舞う魚影、光の幻想~クラウドファウンディグィングを活用した宇宙水族館の構想~」をテーマに提案した大野維親さんと田村哲也さん、中野太耀さんのグループが受賞し、十亀教授から表彰状が授与されました。
シンポジウムの後半は「月面居住への挑戦」をテーマに、十亀教授と春山氏、大貫氏によるトークセッションが実施されました。「極限環境」「資源利用」「居住システム」「モビリティ」などのキーワードをめぐり、月面居住の課題について建築技術などの応用可能性などの視点から多様な議論を展開。十亀教授が提案する月面の居住空間に関するアイデアなども披露されました。十亀教授は、「日本の宇宙開発予算は少なくても、アイデア次第でNASAにも太刀打ちできます。そうした力を培うためにも30年先を見据えて、学生たちが宇宙建築に興味を持てるよう宇宙建築賞のような教育の仕組みを整えていく必要があると思います」と話しました。