建築都市学部では5月16日に湘南キャンパスで、建築家?内藤廣氏による講演会「建築?都市?土木」を開催しました。内藤氏は1981年に内藤廣建築設計事務所を設立し建築家として活躍する一方、東京大学副学長、同大学名誉教授なども務め、昨年4月から多摩美術大学学長に就任。「海の博物館」(三重県)、「安曇野ちひろ美術館」(長野県)、「牧野富太郎記念館」(高知県)、「旭川駅」(北海道)といった数々の建築を手がけ、渋谷駅中心地区の再開発や「新宿グランドターミナル」整備などにも携わっています。今回の講演会はオンラインでも配信し、約1000名が参加しました。
内藤氏は建築家のあり方や変遷を紹介し、「第一次世界大戦後、効率よく物事を動かさなければならない過程で建築、土木、都市の仕事は分かれていきましたことを、ぜひ頭に入れておいてください。建築と土木、その間に都市があり、相互に刺激し合っていかなければいいものはできません」と語りました。さらに、「建築?都市?土木という領域の外から、災害やテロなどさまざまなものが襲ってくる今、非常への心構えが必要です」と話し、東日本大震災以降、現地の震災遺構に関する委員会の仕事を通じて、10年間で230回にわたって三陸地区に通った経験を振り返り、「人との会話の中で教えられることがたくさんあり、いつも“今日も勉強させてもらった”という気持ちになりました。大きな災害が起こるとさまざまな問題が浮上します。そこで何が起きているのかを肌で感じることはとても大切です。近い将来、首都直下型地震や南海トラフ地震がやってきます。その時に、建築、都市、土木の分野で何かを発明して、新しい価値をつくっていくのは君たちです」と語りかけました。また、渋谷や新宿、品川、名古屋、札幌と街の再開発に携わる中で、「建築家でありながら、都市計画や土木に近いこともしています。ぜひ皆さんにも建築だけではなく、そこから領域を広げてほしい」と話しました。
その後は岩﨑克也学部長との対談形式で、会場やオンライン参加者の質問にも回答。内藤氏は、「立派なものをつくるのではなく、その人が笑顔になってくれるか、その場所が本当に安心できるか、会話が弾むかどうかを考え、それらをつくる仕事だと思ったほうがいい。未来はおじさんたちが用意してくれるものではなく、皆さんが主権者です。こういう未来がほしい、自分が考える建築、土木はこうだとはっきり言っていい。勇気を持った若者が出てくることを期待しています」とまとめました。
聴講した中塚陽大さん(建築学科1年次生)は、「建築の分野だけでなく、社会とつなげて考え、複合的に広く捉えられている点が印象的でした。さまざまな人と関わり、共に一つのものをつくっていく大切さを感じました。まだ入学したばかりなので、建築だけでなく広く学んでいきたい」と話していました。