建築都市学部では6月4日にオンラインで、建築都市学部オープニングセミナー「新しいモビリティと新しいまちづくり」を開催しました。今年4月に開設した建築都市学部の理念や教育?研究活動を周知するとともに、建築にまつわる企業や行政、大学などの研究機関の識者らとそのあり方を考える機会とすることを目的としたものです。「Linkage 人?建築?都市を○○でつなぐ」を共通テーマとして昨年度から23年度まで合計9回の講演を企画しており、5回目となる今回は日建設計総合研究所主席研究員でICTを活用した交通?まちづくり戦略や都市?交通計画などが専門の安藤章氏が講師を務めました。
安藤氏は、「産業革命によって車や蒸気機関車ができたことで移動距離が増え、移動の形や都市の形も大きく変化しました。日本でもモビリティ革命によって交通渋滞や混雑、地球温暖化、満員電車でのストレスといった不便益が生じ、日本橋の上に高速道路が通り、駅前にコインパーキングが増えて昔ながらのお店が減るなど、醜いまちに変わってしまいました。まちの魅力を高めるためには、交通と都市計画をセットで考えなくてはいけない」と説明しました。「モビリティは何かをするための派生需要で、本需要ではないと考えられてきました。しかし近年、JR九州のクルーズトレイン『ななつ星in九州』やJR東日本の新幹線に取り入れられた『グランクラス』のように、移動時間を楽しみ、まちの活性化につなげていく新しいモビリティの価値観が生まれてきました」と解説しました。
さらに、スマートフォンのアプリを使って経路検索や予約、支払いまで一括で利用できる『MaaS』や自動運転の登場によって交通計画や交通政策の概念が大きく変わっていることに触れ、「自動運転社会になれば運転手を降ろした車はその場を離れることができ、駅前一等地の駐車スペースを人間のにぎわい空間に戻すことが可能になります」とコメント。横浜市黄金町や埼玉県さいたま市で行ったシェア型モビリティの実証実験で、観光地の情報発信やシェアサイクルの導入によって人の流れが変化した例も紹介しました。
講演後には岩﨑克也学部長の進行で参加者をまじえた質疑応答も実施。学生からは、「これからは『モビリティ×建築』という考え方を持つ必要があると感じました。大学生のうちにどのような知識を身につけるべきでしょうか」「まちづくりに携わるにはどのような仕事がありますか?」といった質問が寄せられ、安藤氏が丁寧に回答しました。