8月26日(水)、海洋生物科学科の櫻井泉教授、三浦博上級技術員ならびに櫻井研究室に所属する4年次生2名が、寿都湾におけるホタテガイ養殖場の底質環境調査を実施しました。調査には寿都町役場および寿都漁業協同組合のほか、道立水産試験場や水産技術普及指導所の職員も加わり、底質採取や採水作業を行いました。当日は天候にも恵まれ、強い日差しの中、計画どおりにサンプルが採取できました。
国内における海面養殖業は、低迷が続く水産業の中でも比較的安定した水準で推移しています。北海道においては各地でホタテガイ養殖が盛んに行われており、最新の統計によると道内の生産量は約38万5千トン、生産額は約778億円に及んでいます。
しかし、養殖業が営まれている海域では、飼育個体の残餌や排泄物に起因した有機物負荷により、夏季に底層の貧酸素化や硫化水素の発生が問題視されるようになりました。北海道のホタテガイ養殖場においても、貧酸素水の発生によって貝が大量死する被害が度々発生し、漁業者を悩ませています。このため、養殖場の底質環境を定期的に調査し、問題があれば対策を講ずるモニタリングの実施が不可欠となっています。
本学臨海実験所が立地する北海道寿都町では、1960年代後半よりホタテガイ養殖が展開されており、カキ養殖と並んで地域の基幹産業となっています。しかし、寿都町においてホタテガイ養殖が行われてきた半世紀の間に養殖場の底質環境を調査した事例はなく、漁業者および関係者の間では長期に及ぶ養殖に起因した底質悪化が危惧されるようになりました。そこで、寿都臨海実験所では、地元の町役場および漁業協同組合との地域連携活動の一環として2015年より毎年8月にホタテガイ養殖の底質環境調査を行っています。
これまでの調査結果によると、有機物の堆積や硫化水素の発生といった底質悪化は認められませんでしたが、海底に棲む小動物(マクロベントス)の組成が年々変化するなどの現象が観察されており、継続したモニタリングが必要との見解が示されました。
今後は12月までに調査結果を取りまとめ、翌年2月の臨海実験所成果発表会において関係者を含む町民に周知していく予定です。また、この調査の結果は卒業研究のテーマにもなっており、担当する坂口智哉君は早速採取した底質やマクロベントスの分析に取りかかりました。