経営学部では12月22日に、経営特別セミナーの授業の一環で「浜野製作所事例報告 東京?下町?町工場の挑戦!」を開催しました。同セミナーは、本学部と政治経済学部経営学科の学生を対象に、マーケティングや経営戦略、財務、会計、人事管理などを実務家や経営者から直接企業の経営課題への取り組みやそのプロセスについて学ぶ授業です。今回は経営学科を1984年度に卒業し、東京都墨田区で精密金属加工を手掛ける浜野製作所の代表取締役社長を務める浜野慶一氏が講師を務め、オンラインも含め約50名が受講しました。
浜野製作所は、金属加工業を手掛ける町工場ながら、特定顧客への量産対応をはじめ、多品種少量の試作支援、顧客の装置開発などへと事業を大きく拡大し、社会から大きな注目を集めています。早稲田大学や墨田区内の中小企業、行政、金融機関などと連携して「電気自動車HOKUSAI」を開発したほか、海洋研究開発機構や芝浦工業大学、東京海洋大学などと連携して開発した深海探査艇「江戸っ子1号」でも話題を呼びました。近年では製造能力を持たない企業のものづくり開発拠点である「Garage Sumida」も展開しています。
浜野氏はセミナーで、まず墨田区内の工場数や手掛ける仕事の内容を紹介。続いて浜野製作所の概要と沿革について触れ、「創業者の父は福井県出身ですが、上京して小さな金属加工製品の職人として独立し、金型加工の工場を立ち上げました。さらに実際の部品加工の注文も入ったことで、家電製品の小さな部品なども作っていました。始めたころは景気よかったのですが、社会環境や時代背景の変遷で日本企業の工場が海外の生産拠点に移っていったこともあり、私が後をついでからは部品加工の量産は残しつつ、金型を使わない精密板金の仕事を始めました」と事業拡大の経緯を紹介しました。
そのうえで、国内中に整備されたITインフラや輸送網の充実で日本中すぐに品物が届くようになったほか、ロボット開発などものづくり周辺サービスのあり方、多種多様な業界との交流の現状などを解説。「経営理念として『おもてなしの心』を常に持ちってお客様、スタッフ、地域に感謝?還元し、夢(自己実現)と希望と誇りを持った活力ある企業を目指そう! と掲げています。さまざまな事業を始める際は、この経営理念にどのようにそぐうのかを判断しています」と経営者としての考えを披露し、2000年に工場が火災に遭い苦境に立たされた経験を振り返りながら取引先との信頼関係構築のポイントやその大切さについて熱弁を振るいました。また、「東京はものづくりに適した場所ではなく、海外と同じことをしていては太刀打ちできないという考えから、目線や視野を変えて、東京という地域からあらたなものづくりを発信しようと430社以上のスタートアップや大企業の新規事業開発支援を行うガレージスミダを立ち上げました。一方でトヨタ自動車やコニカミノルタなど大手企業とも共創に向けて出向を受け入れているほか、トヨタ、JAXAと移動機構試作機の開発にも取り組んでいます」とさまざまなチャレンジについて語り、学生たちが熱心にメモを取る姿が見られました。