【児童教育学科】桑原(北川) 公美子先生【教員紹介】

桑原(北川) 公美子 教授

くわはら(きたがわ) くみこ

所属 児童教育学部 児童教育学科 

学位

博士(教育学)

研究分野

児童文化/児童文学/保育史 

キーワード

# 童話 # 口演童話 # 幼稚園教育 # 保育 # 明治 # 大正 # 昭和


保育の中の子どもと童話-歴史的視点から見えてくるもの 

育における教材としての童話の歴史 

明治期に日本で初めて幼稚園が設立されて以来、童話は教材として活用されています。今も当たり前のように保育の中に存在している童話ですが、その教育的意味は時代によって大きく変わってきているのです。例えば、美しい気持ちを育てられるのだから積極的に多くの童話を取り入れるべきだと評価された時代もあれば、童話は空想にすぎず嘘を教えるものだから排除しなくてはならないといった議論が起こったこともあります。戦争時には戦意高揚のために童話が使われました。そして現在、子どもは、絵本や紙芝居、アニメなど多くの媒体をとおして童話と出会っています。保育にICTが導入されることによって、その出会いはさらに多様化していくでしょう。ただ、それを保育の中で教材として活用し、子どもたちに「意図的に」伝えていく以上、その教育的意義は常に考えていかなければなりません。その教育的意義を、これまでの歴史的な変遷を明らかにすることで捉え直そうと考えています。 

教育?保育を考える時には「今(現在)を見て、過去から学び、未来を考える」ということが必要です。なぜなら、教育?保育はすぐにその成果が目に見える形でわかるものではないからです。その教育?保育を受けた子どもたちが大人になった姿や、彼らが作りだす社会を見てみないと、その教育?保育が「良かったか?悪かったか」「ベストだったか」というのはすぐにはわかりません。例えば、現在の日本の教育?保育の姿は大正期ととてもよく似ていて、個々の子どもを大事にしてその感性を育む重要性は大正期に実践されてきたことです。ただ、そのすべてが最高?最善の教育であったと言い切れないことは、その後の日本の歴史を見ればわかります。 

これまでの日本の歴史において、保育という場で、教材としての童話にはどのような教育的意義が見いだされたのか、それが必要とされた背景を明らかにすることで、現在の教育的意義を捉え直したいと考えています。

幼児教育における口演童話の歴史 

「語る童話」としての口演童話は、大正期に一般社会に広く普及しました。文字が満足に読めなかったり、簡単に本?雑誌等が入手できなかったりした人々を対象に直接語り聞かせたのです。その直接的な声による語りの童話は人々の心を強く惹きつけ、「口演童話家」という肩書が生まれたほどです。その一方、教育?保育に携わる人たちは、それだけ人の心をつかむことのできる「話し方」に強い関心を示すようになり、口演童話とのかかわりを深めていきます。そして戦争期には、国民の気持ちを奮い起こし、国が目指す方向への賛同を促すための有効な手段として口演童話が活用されていくのです。 

現在でも、小学校就学前の子ども(幼児)にとって、童話は自分で読むものではなく誰かに読んで聞かせてもらうものです。そのため、保育者はどのような童話を選ぶかということだけでなく、どのように語るかといった話し方も「保育方法」として考えることが求められます。すぐにその効果が示されない教育?保育だからこそ、現在の保育方法を考える上で過去から学ぶものがあると考えています。 

これまでの日本において、多くの人々を惹きつけ、その気持ちを動かした口演童話は、どのようなものであったか、それが教育?保育、そして社会にどのような影響を与えたのかについて、歴史的な視点から明らかにしたいと考えています。 


桑原(北川)先生が注力しているSDGs


児童教育学科に興味がある受験生へ

「子ども」も「教育?保育」も絶対的な正解がないからこそ、とても面白く魅力ある世界です。そしてそこには、童話からでも歴史からでもさまざまなアプローチの方法があります。あなたは子どもの何が知りたいですか? 保育?教育のどこに面白さ不思議さを感じますか? それを自分の興味関心のある視点から明らかにすることが研究です。そしてその成果を今の目の前の子どもや教育?保育につなげて生かしていくことが研究の意義であり、自分が教員?保育者になったときの土台や指標ともなります。そして、その土台?指標も、さらなる研究と実践を重ねる中で、何度でも塗り替えてバージョンアップしていけることも、正解のない教育?保育に携わることの大きな魅力です。  

本研究内容に関心がある外部の方へ

いつの時代でも、「子ども」「保育?教育」はその当時の社会において重要な政策対象となってきました。そこには、その成果がすぐに提示されないこと、また絶対的は評価ができないことが、良くも悪くもその特性として含まれています。ただ、そのような分野だからこそ「今(現在)を見て、過去から学び、未来を考える」という姿勢で、BestではなくBetter(よりよく)を追究し、常にエビデンスを提示しながら先を見通すような研究を重ねていきたいと考えています。 


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