私は大学院生の時に、数年間、アメリカ東海岸(ボストン地区)の大学で留学生活を送りました(写真A)。
最近、留学中の資料を整理していると、当時の大学新聞で、美術史の授業風景をとりあげた記事が出てきたので、ここにご紹介します。新聞は、『ハーバード大学新聞(Harvard University Gazette』という名称で、1989年5月28日のものです(写真B)。
1989年といえば、35年前になりますね。この新聞は学生が中心になって執筆する、いわば学生新聞でした。
留学中、楽しかったのが、美術館を活用した授業でした。私は、美術史学科に所属し、ギリシャ美術史を学んでいたので、実物を見る授業には本当に刺激を受けました。写真Bは、E?バーミュール教授が、ギリシャ美術史の演習授業を、大学美術館の展示室内で行っている様子です。ギリシャ彫刻の彫像断片(トルソ)や陶器などが展示された空間で、いろいろな気づきがありました。
大学美術館は10年ほど前に改築され、コレクションの展示場所も変わりました。2014年に再訪したとき、これらのギリシャ彫刻は、美術館の回廊に展示されていました(写真C)。この展示もなかなか面白いと思います。
美術史の勉強は、もちろん文献資料も活用しますが、実物を見ることの大切さを留学中にたたきこまれました。美術史のさまざまな授業で、大学美術館や、近隣のボストン美術館の作品を実際に見た上でまとめるレポート課題が出されました。一人でじっくり作品と向かい合うことも、クラスの仲間と意見を交換しながら見学することも、どちらも貴重な経験となりました。
いま、東海大で担当している「ヨーロッパ芸術論」やゼミの授業でも、できるだけ、美術館の見学を取り入れるようにしています。作品を自分の目で見ることの楽しさを教えてくださった、留学中の恩師の授業をあらためて思い出し、ここに紹介させていただきました。
中村 るい