文学部歴史学科西洋史専攻と文化社会学部ヨーロッパ?アメリカ学科では1月14日に、湘南キャンパスで「『文学部歴史学科西洋史専攻/文化社会学部ヨーロッパ?アメリカ学科共催知のコスモス』シンポジウム『食べる、飲む。』」を開催しました。両学科の教員が、食を手がかりとして、各自の研究対象や関心のある分野について紹介するものです。WEBビデオ会議システム「Zoom」と併用で開催し、教員や学生ら約190人が参加しました。
初めに、中村るい教授(ヨーロッパ?アメリカ学科)が「古代ギリシャのワインと器」をテーマに、古代ギリシャにおけるワインの役割や飲酒文化、酒器の種類を紹介。中でも、祝い事や歓談を目的とした饗宴「シュンポシオン」で使用されていた底浅の酒器「キュリクス」について解説し、器の内側に描かれた絵付けの物語や空間技法など古代ギリシャ文化の豊かさを語りました。続いて、大谷哲講師(歴史学科西洋史専攻)が「他人の金で焼き肉が食べたい~古代ローマにおける肉食~」と題して、古代ローマ社会で肉を食べることの価値観やそれに伴う宗教性と貧富の差について講演。「肉は、文明人であるローマ人にふさわしくないとされていた一方、儀式では神への捧げもの、宴会の席ではもてなす上で欠かせないものでした。また、値段や調理の問題から庶民は食べる機会が限られ、富裕層の宴会で料理をくすねていました」と説明し、肉食文化を読み解くことで、経済力が不均衡な社会構造を浮かび上がらせました。
また、川﨑亜紀子教授(歴史学科西洋史専攻)が「ミシュランで食べる旅する~ベル?エポック期における『フランス地方料理』の発見~」と題して、フランスのタイヤメーカー「ミシュラン」が世界的グルメガイドブック『ミシュランガイド』を制作するまでの歴史とその影響について講演。「ミシュランガイドにより各地に巡礼地が生まれ、パリの高級料理だけでなく、郷土料理が再注目されるなどしてフランスの国民的アイデンティティを表現する料理も誕生しました。また、ホテルの競争促進や農業国としての伝統維持にも一躍を担いました」と説明しました。最後に、原基晶准教授(ヨーロッパ?アメリカ学科)が複数の書誌を元にイタリア料理の概念について解説。「イタリア国家成立後にイタリア料理という概念が出現したという解釈は、それ以前からイタリア料理が存在していることから、不可能である」と指摘しました。
報告後に設けられた質疑応答では、古代ローマにおけるジェンダーの格差や食べられていた肉の種類、ミシュランの狙いなどについて多くの質問が寄せられました。