文化社会学部広報メディア学科は7月9日に湘南キャンパスで、知のコスモス講演会「デジタル化する雑誌~ジャーナリズムと産業的基盤のあいだ~」を開催しました。読売新聞東京本社のコンテンツ企画部次長で、ファッション誌『マリ?クレール』のビジネス推進も担当する増田芽衣氏を講師に招きました。
学生や教職員、一般市民ら約60名が集まった当日はまず、本学科の笠原一哉講師が2023年10月に景品表示法違反として規制された「ステルスマーケティング」について解説。「記事と広告を区別することがジャーナリズムの重要な規範になっていましたが、近年はネットメディアに限らず、新聞や雑誌などの伝統的なマスメディアも、コンテンツの収益力を高めるために、この区別を意図的にあいまいにしているようにみられます」と問題提起しました。続いて増田氏は、「『マリ?クレール』を担当し始めた当時、広告の表記ルールが新聞とは全く異なり、記事と広告の区別がわかりづらいことに気づきました」と振り返り、各ファッション雑誌の紙面を紹介。会場に「記事と広告のどちらに該当するか」といった質問も投げかけました。「ページ数が示されず目次にも載っていない内容や、お問い合わせ先が掲載されているものが広告で、編集部が作る記事体広告を『タイアップ』と呼びます。日本新聞協会が定める新聞広告掲載基準に則り、各社がルールを決めて広告を掲載しています」と説明しました。また、情報伝達手段の多様化をはじめ、メディア接触時間や雑誌閲覧時間に関する調査結果から、出版業界の売り上げ減少に触れ、『マリ?クレール』で新たな収益源の確保に向けて展開するイベントも紹介しました。「インフルエンサーやクライアントが自ら情報を発信できるようになる中、メディアとしてのファッション雑誌は消滅していく可能性もありますが、情報の『仲介者』としての役割を見つめ直し、発信する情報の質を高めることで巻き返していけるのではないかと思います」と語りました。増田氏による講演の後には、本学科の水島久光教授と笠原講師を交えたディスカッションも行いました。
参加者からは、「1980年代はファッション雑誌が提案するスタイルが好きだから購入していたという傾向が見られ、現代における雑誌の位置づけとはかなり違うと感じました」「紙媒体で培われてきた編集部の質?撮影技術?企画力は、デジタル媒体に転換されると生かされなくなってしまうのでは」といった感想や、「タイアップ広告は、大企業になればなるほど記事と広告の区別がつきにくくなるが、どのような対策がされているのでしょうか?」などの質問が寄せられました。