広報メディア学科の水島研究室が伊勢原市の「平和を祈念するパネル展示」の運営に協力しました

文化社会学部広報メディア学科の水島久光教授の研究室が、8月23日から25日まで伊勢原市民文化会館で開催された「平和を祈念するパネル展示 語り継ごう 平和の尊さを」の運営や展示制作などに協力しました。同市では1993年に制定した「伊勢原市平和都市宣言」に基づき平和啓発事業を推進しており、水島研究室では2014年から「記録をどう扱い、どのように継承していくか」をテーマに同事業に協力。市内に住む戦争体験者へのインタビュー映像の制作や、中学生のための平和学習の一環として実施されている「中学生ヒロシマ平和の旅」のコーディネートなどに取り組んでいます。

今回は「伊勢原市の戦争と平和の記憶」をテーマに、「伊勢原市と〈平和ドキュメンタリー映像〉」「風景の中に残る記憶―比々多?大田?伊勢原北?大山」「〈愛育〉に込められた思い―高部屋の戦前?戦後」「コミュニティの歴史:〈戦争〉と〈地域〉」といったコーナーに分け、同市が保存している戦争資料などを展示。隣室では市内7地区のうち比々多など4地区のドキュメンタリー映像を上映しました。

また、新たに調査?取材をした高部屋地区の保育園に残され、市で保管されてきた「愛育村事業」の資料に着目。水島教授は、「1936(昭和11)年から全国の農山漁村を対象に展開された『愛育村』に指定されていた高部屋地区では、母子の健康と福祉について心身の世話をする婦人の奉仕活動が行われていました。調査の過程で、当時の保育園の後継施設が保管し市に移管されていた多くの貴重な多様な資料を見ることができ、児童教育学部の桑原公美子教授の協力を得て検証を重ねてきました。1954年に編集された愛育村の写真集や、賞状?証書類から時代の激動を読み解けることから、戦中から戦後にかけての歴史の変遷について愛育村事業を通じてたどることができるのではないか、という手応えを感じました」と話します。

展示の準備を重ねてきた野中文渚さん(文化社会学部4年次生)は、「全国に数ある愛育村の中でも高部屋地区に多くの資料が残っていたのはなぜか、また残してきた意味は何なのかを深堀したい思いで取り組んできました」と話します。また、山下蓮人さん(同3年次生)は、「愛育村の当時の活動を伝える未完成の映像フィルムが見つかり、驚くと共に昔の友だちが遺してくれた宝物が出てきたように感じました。現在の保育園の園長さんやさまざまな関係者の話を聞き、皆が『昔の人が遺してくれたものを後世に繋げ、何かしら意味を考えて自分たちなりに行動することが大切』と話していたことが印象的です」と話しました。

来場者からは、「毎年来場していますが、昨年のテーマである空襲が横軸だとすると、今年のテーマである伊勢原のコミュニティは縦軸で、全体として戦争を捉えられることに意義を感じます」と感想を話しました。水島教授は、「戦争の話は100人いれば100人の記憶があり、それぞれの目の高さ、距離の遠近感のようなものを立体的に整理していくと全体像に近づける。20世紀は戦争の時代であるとともに映像の時代であり、それ以前の時代とは違った過去の振り返り方ができると考えています」と話しました。