文化社会学部広報メディア学科の水島久光教授の研究室が、8月26、27日に伊勢原市文化会館で開催された「平和を祈念するパネル展示 語り継ごう 平和の尊さを」の運営に協力しました。同市では1993年に制定した「伊勢原市平和都市宣言」に基づき、恒久平和、核兵器廃絶の理念を広く市民に啓発し、理解を促進するため、平和啓発事業を推進しています。水島研究室では、「記録をどう扱い、どのように継承していくか」をテーマに、戦後70年にあたる2015年から同事業に協力。市内に住む戦争体験者へのインタビュー映像の制作や中学生のための平和学習の一環として実施されている「中学生ヒロシマ平和の旅」のコーディネートなどを行っています。
今回の展示では、伊勢原市や大磯町、水島研究室で保管している軍服や雑誌、写真、地図、日記などの史料を展示。第二次世界大戦下(1939年~1945年)だけでなく、日露戦争(1904年)や満州事変(1931年)時の史料から展示することで、日本が戦争へと向かっていく過程を時系列で並べました。学生たちは各史料の説明文などの作成にも注力し、来場者からは、「戦争に関する展示では、原爆の恐ろしさや戦火のおぞましさを伝えるものが多い。もちろんそういった点を後世に語り継ぐことも大切だと思いますが、今回の展示はなぜこの戦争が起きたのか、また当時の市民の思いはどうだったのかなどが非常に分かりやすくまとまっていました」といった声が聞かれました。
水島研究室の武者秀昭さん(3年次生)は、「祖父が広島県に住んでいたこともあり、幼いころから原爆が落とされた当時の様子や戦争の恐ろしさを耳にする機会がありましたが、この取り組みに参加して史料を読み込んだり、実際に触れたりすることでさらに当時の人の考えに近づくことができたと感じています」と語り、今回の展示準備に有志として参加した文学部歴史学科日本史専攻の大島美奈子さん(3年次生)は、「学科での学びの一環で太平洋戦争について研究する中で、今回の展示を準備していると知り、“参加させてほしい”と水島先生にお願いしました。『伊勢原市史』という史料に残っている1931年~1946年に起きた事象を年表にまとめる作業を担当しましたが、高校時代までに教科書で読んでいたときよりもよりリアルに戦争の恐ろしさに触れられました」と話します。水島教授は、「戦後77年を迎えた2022年はロシアによるウクライナ侵攻によって、多くの人が“戦争は過去のものではない”とあらためて感じた年になりました。私たちの研究室では、かねてから失われていく記憶をどのように記録し、継承していくのかを探りながら、『戦争はある日突然始まったわけではない。社会をどのような空気が包み、どういう精神構造で人々が戦争へ加担していったのか。それを明らかにしなければならない』と考えてきました。今回、史料を分析し、時系列で展示をする中でその一端を伝えることができたと考えています」と話しています。