前回(「ノルウェーのトロムソ市の映画祭について(1)」)は、主にトロムソ市にあるノルウェー最古の映画館「バーデンス劇場」のことを紹介しました。
今回は、野外上映会の様子を紹介します。「ノルウェー最古の映画館が会場となること」に加えて、「極夜の野外上映会」もトロムソ国際映画祭の特徴であるとされています。
野外上映会では、市の中心部にある広場にスクリーンと客席を設置して、主に子供向けの作品(30分程度の短編やアニメーション作品など)を上映します。この時期のトロムソは極夜のため、空が明るくなるのは午前10時?午後2時の4時間程度です(「空が明るくなる」といっても、夜明け前の薄っすら明るくなる程度)。極夜という条件を利用して、野外上映会ではだいたい、朝9時と夕方4時から上映を行なっています(大人向けの映画の場合は、午後7時ごろから)。毎回、子供たちで満席になっていました。温かい飲み物や果物が配られ、隣り合って座る友達同士で楽しそうに映画を観ていました。
家の中で(テレビで)映画を観る方が、暖かくて居心地が良いかもしれません。しかし、ここで映画を観ている人たちは、大きなスクリーンで、野外で、友達と一緒に、知らない人たちと一緒に、満席になった会場で映画を観ることに楽しさを感じでいるように見えました。
トロムソ国際映画祭は多くの市民ボランティアによって支えられ、上映会には多くの観客が来場しています。100を超えるさまざまな映画を上映し、トークイベントや音楽のライブ演奏、そして極夜の野外上映会など、ここでしかできない映画体験をもたらしています。
地域の映画館や映画上映会?映画祭が、どのような社会的役割を担っているのか、そして地域の中でどのような存在であるのか。このような関心にもとづいて、ノルウェーと日本の映画館についての研究を行っています。
心理?社会学科准教授 石垣 尚志