機械工学科の窪田講師らの研究グループが経済産業省のGo-Tech事業に採択されました

工学部機械工学科の窪田紘明講師らの研究グループがこのほど、経済産業省の「成長型中小企業等研究開発支援事業」(Go-Tech事業)に採択されました。同事業は、中小企業等が大学と連携して、ものづくり基盤技術やサービスの高度化に向けた研究開発および事業化への取り組みを支援するものです。窪田講師は、医療用注射針やカテーテルに使用される極細金属チューブの専業メーカーとしては日本最大の株式会社富士精工と連携し、早稲田大学名誉教授の浅川基男氏、国立研究開発法人産業技術総合研究所の権藤詩織氏をアドバイザーに迎え、3年計画で「微細脳血管手術マイクロカテーテル用の超極細薄肉SUSチューブの研究開発」に取り組みます。事業管理機関として公益財団法人ふじのくに医療城下町推進機構が参画します。従来の引抜き加工技術にコンピュータシミュレーション技術と人工知能(AI)技術を駆使して、マイクロカテーテル用の超極細薄肉ステンレス(SUS)チューブの製品開発およびカテーテル先端に向かって細径化していく世界初のテーパ形状を持つ継ぎ目のない一体型チューブの製造技術の開発を行います。

細長いチューブを血管内などに通して治療するカテーテル手術では、患部までの距離や血管の太さなどによってさまざまな種類のチューブが使い分けられています。脳の血管の70~80%は血管径0.2~0.3mmの穿通枝(せんつうし)によって構成されており、従来のステンレスチューブでは穿通枝が引き起こす脳梗塞「ラクナ梗塞」の全ての患部には対応できず、より細いチューブの開発が喫緊の課題となっています。脳梗塞の治療では、薬液の輸送や血栓を除去する際、管内に内腔の確保が必要となるため、外径0.18mm、内径0.12mm、肉厚0.038mm、長さ2mのサイズのマイクロカテーテル用ステンレスチューブの開発が必要となります。本研究では、引抜き加工時にバックテンション(引抜く方向と逆方向に引張る力)をかけてチューブの内腔を確保する技術を開発します。窪田講師は、「バックテンションをかけすぎると断線を起こします。AIを用いて、断線せず薄くて細いチューブを作る加工条件を探ります」とコメント。

さらに、手術に使われるカテーテルは、血管に沿って変形させるために先端に行くほど細くなるテーパードワイヤが、押込み力を確保する必要がある後端部にはステンレスチューブが用いられており、これらの異部材を溶接するためのコストや時間がかかっていました。窪田講師は、「ステンレスチューブを局所的に加熱して引き伸ばすダイレス引抜き技術を適用し、先端の細径部を含む一体型のチューブを製造可能になり、今までたどり着けなかった脳の先までチューブが届くようになります。より安価に信頼性の高いチューブを製造できればコスト面がネックとなって手術を受けられない人にも広く提供できると考えています」とコメント。来年度以降は研究室の学生たちも加わって研究に取り組む予定です。