建築学科の伊藤准教授が建築史学会賞を受賞しました

工学部建築学科の伊藤喜彦准教授が4月24日に、建築史学会賞を受賞しました。同賞は、過去3年間に公表された論文、著作、報告書の中から、建築史学の発展と水準の貢献に寄与する論考1点に贈られるものです。

伊藤准教授は2017年3月に刊行した『スペイン初期建築史論-10世紀レオン王国の建築とモサラベ神話』(中央公論美術出版)で受賞しました。10世紀のイベリア半島は、3分の2の地域をイスラム教国の後ウマイヤ朝が占め、北部にレオン王国をはじめとするキリスト教国が位置する状態にありました。そうした中、イスラム教国内でも「モサラベ」と呼ばれるキリスト教徒が生活するなど、イスラム教徒、キリスト教徒、ユダヤ教徒らの住民は文化や生活でも交流していました。

これまでのスペイン中世史研究では、スペイン人としての不変の国民性を求める視点と異文化共生(コンビベンシア)に今のスペインの源流を求める視点から研究されてきました。伊藤准教授は外国人の視点から同時代の資料を細かく読み解き、当時の社会像を再構成。そのうえで、修道院や宗教施設の建築様式を分析し、これまで「モサラベ」が建設を担っていたと考えられてきたこれらの施設が、実際は現地で受け継がれてきた土着の技術を活用しつつ、イスラム?キリスト両者の様式を取り入れて建設されていたことを明らかにしました。

伊藤准教授は、「この分野については、スペインでは多くの研究者がいるのですが、日本では私しかいない状態にあるため、受賞を聞いた時は大変驚きました。これまでは特定の空間や場所の視点から歴史を解明する研究に取り組んできましたが、現在は、都市の歴史やありようが、建築にどのような影響を与えていったのかという視点を持って研究に取り組んでいます。現在残っている建物も、はじめからその形だったわけではなく、その地域の権力のありようや人々のせめぎあいの中で、役割や形が変化してきています。そうした視点から研究することで、今は見えていない新たな側面に光をあてたい」と話しています。

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