工学部原子力工学科では11月1日に、青森県六ケ所村にある日本原燃株式会社の「原子燃料サイクル施設」を視察しました。本学科では以前から定期的に原子力関連施設などを見学してきましたが、コロナ禍で過去3年間は中止となっていました。このほど、若杉圭一郎教授(応用化学科)の研究室に所属する4年次生が「後輩たちにも現場を見て学んでもらう機会をつくりたい」と今回の活動を企画。若杉教授の指導で、原子力発電環境整備機構が放射性廃棄物の最終処分に関する国民の理解を図る目的で実施している「地層処分事業の理解に向けた選択型学習支援事業」に応募し、審査を通過しました。そうして実現した視察にはサマーセッション科目「原子力入門」を履修している応用化学科、機械工学科の1年次生14名、航空宇宙学科航空宇宙学専攻の3年次生1名、若杉教授の研究室に所属する4年次生6名と教員2名の計23名が参加しました。
八戸市内からおよそ1時間30分かけて向かうバスの車内では、原子力発電環境整備機構から委託を受けた日本原子力文化財団の宇井直人氏(原子力工学科1988年度卒)が講義を担当。日本のエネルギー供給の現状や原子燃料サイクルの歴史、六ケ所村のエネルギー関連施設などについて説明を受けました。日本原燃到着後は、「六ケ所原燃PRセンター」で施設全体の概要を聞き、原子力エネルギーやリサイクル方法について再処理工場の内部を再現した大きな模型やパネル、映像を見ながら学びました。続いてバスで移動しながら「ウラン濃縮工場」と「低レベル放射性廃棄物埋設センター」のほか、原子力施設の新規制基準に沿って自然災害による重大事故防止を目的とした防護ネットや防護板の設置工事の様子も視察。「高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター」では、かつてフランスとイギリスの施設に高レベル放射性廃棄物の再処理を委託し、処理後に返還されたガラス固化体1830本が貯蔵されている様子をガラス越しに見学しました。
企画した地井桐理子さん(原子力工学科4年次生)は、「再処理の工程を再現した模型などを見ることができ、授業でわからなかった内容も理解が深まりました。放射性廃棄物の処理?処分は私たちの世代が解決していかなければならない問題ですが、人々の理解が進んでいないのが現状です。研究室では安全性のシミュレーションなどもしているので、卒業後は大学院に進学し、多くの人に自分事としてとらえてもらえるような活動をしていきたい」とコメント。関萌奈さん(応用化学科1年次生)は、「漠然と原発反対派でしたが、想像していた以上にきちんと安全確保がされているのだと感じました。北海道の幌延深地層研究センターなど、日本各地の施設も見学してみたい」と意欲を見せました。引率した若杉教授は、「メディアで取り上げられる情報を鵜呑みにするのではなく、自分の目で見て、感じて、考えてほしいと思っていました。今回の視察を通じて原子燃料サイクルの仕組みや安全性など、多くの学びがあったのでは」と話していました。