大学院博士課程総合理工学研究科を2022年度に修了した平勇人さんと指導教員の落合成行教授が、このほど、日本トライボロジー学会の論文賞を受賞。5月30日に国立オリンピック記念青少年総合センターで開催された表彰式に出席しました。
今回受賞した論文は、「PIVを利用したEHL接触部周囲の油膜における圧力推定手法の検討」です。現代社会で用いられているさまざまな機械には、摩擦低減や動力伝達を担う「転がり軸受」や「トラクションドライブ」と呼ばれる装置が搭載されています。これらのパーツの接触部分は弾性流体潤滑(EHL)状態になります。既存の研究ではEHL接触部周囲の流体特性や圧力分布について、低荷重や低周速の条件で可視化されることが多く、平さんらは高荷重?高速化条件での分析に挑戦。粒子画像流速測定法(PIV解析)によって得られた流体の速度をさまざまな支配方程式に当てはめた結果、まず油膜後部で周速の変化が見られるとともに、急激な圧力低下が生じること示され、EHL後部で起きる油膜破断のメカニズムの検証ができました。
今年度からダイハツディーゼル㈱に勤務している平さんは、「転がり接触部周囲のように回転する物体同士の間の隙間では、センサを入れることが非常に難しかったこともあり、これまでその隙間を流れる流体の圧力を測定するといった事例は見受けられませんでした。今回考案した手法がこのような圧力測定が行われなかった領域に対してアプローチするきっかけとなったら嬉しいです。」と語っています。