大学院工学研究科修士2年次生の平井克樹さん(指導教員=木村啓志教授 マイクロ?ナノ研究開発センター、工学部生物工学科兼任)が、昨年9月に愛媛大学で開催された日本機械学会2024年度年次大会マイクロ?ナノ工学部門で若手優秀講演表彰を受賞し、このほど表彰状が届きました。同賞は講演会参加者の中から、優秀な発表を行った若手研究者に贈られるもので、来年度に実施される第16回マイクロ?ナノ工学シンポジウムの表彰式では平井さんのメッセージビデオが上映される予定です。

発表のテーマは「離散要素法による排石予測シミュレータを用いた回転運動が自然排石に与える影響の検討」です。激しい痛みや血尿を伴う腎結石症は近年、日本で罹患率と再発率が高くなっています。治療法は患者の負担が大きい外科的治療と自然排石治療がありますが、平井さんは、より患者の負担が少ない自然排石治療において効果的な身体運動を実験とシミュレーションの両面から検討。新たな腎結石症の治療方法の確立を目指しました。
平井さんは、「尿などの流体の動きではなく、その中にある個体(結石)の動きに着目してシミュレーションしました。結石を剛体の球と仮定し、側転などの回転運動における体の動きを、浮力や重力などを詳細に加味した運動方程式を用いて計算したところ、左側の腎臓における結石の排石には左回転運動が有効なことがわかりました」と説明。受賞について、「学部生時代の研究はコンピュータシミュレーションが中心で、緻密な実験は修士課程に進学してから本格的に取り組み始めたためデータ処理や再現性など苦労の連続でした。受賞の一報を受けたときは驚きましたが、発表を時間内に収めようと、研究室の仲間を前に何度も練習し、想定問答を磨いて臨んだ成果だと感謝しています」と話しました。
木村教授は、「医学領域における疾患に対して工学的なアプローチで新しい治療方法を開発することを目指して、実験と数値計算シミュレーションの二本立てでアプローチする点がこの研究の新しいところです。企業や大学の博士研究員も発表する中で、修士の学生としての受賞は評価に値します。この成果を受け継ぎ、研究室として今後は個人差の著しい腎臓の形態や結石の大きさの違いなどを対象にさらに研究を進め、治療法としてどのように適用させるか、より進んだ課題に取り組んでいきたい」と話しています。