工学部材料科学科の高尻雅之教授らの研究グループが、画期的な熱電素子の開発に成功。その成果をまとめた論文「Self-powered broadband photo-detection and persistent energy generation with junction-free strained Bi2Te3 thin films」が、国際ジャーナル『Optics EXPRESS』Vol.28 Issue 19(インパクト?ファクター=3.67)に9月3日付で掲載されました。
熱電素子は、わずかな温度差を電気エネルギーに変換できる材料で、災害時などに送電網が寸断された場合でも活用できる自律型センサや生体反応を常時モニタリングするセンサの電源として期待されています。その一方で、従来の熱電素子ではプラスの電気を発生させるP型素子とマイナスの電極を生むN型素子が必要であり、製造工程の複雑化による製造コストの増加といった課題がありました。
今回の研究は、アメリカ?マサチューセッツ工科大学のスヴェトラーナ?ブリスカーナ博士と、イタリア?ビコッカ大学のブルーノ?ロレンジ博士らと共同で手掛けたものです。熱電素子の材料であるN型ビスマステルル(Bi2Te3)をフレキシブル基板の材料として使われるカプトンの上に成膜して折り曲げると、熱を電気に変えられるだけでなく、光(赤外線)を電気に変えることができ、N型素子のみで発電できることを明らかにしました。
高尻教授は、「N型素子のみで光と熱の両方で発電できるハイブリッド型の素子ができたことで熱電素子の可能性がさらに広がったと考えています。製造法も簡便であるため、実用化に向けた大きな一歩も踏み出せました。今後は、ビスマステルルの成膜条件などを調整して性能の向上を目指すととともに、より環境負荷の少ないカーボンナノチューブを使った熱電素子の開発も進めていきます」と話しています。
【論文URL】https://www.osapublishing.org/oe/abstract.cfm?uri=oe-28-19-27644