工学部光?画像工学科の三上修元教授(マレーシア日本国際工科院客員教授)が開発した光通信用デバイス「光ピン」がこのほど実用化され、このほど研究概要やこれまでの取り組みなどをまとめた動画が国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)のホームページで公開されました。(「Science Portal 科学技術の最新情報サイト」https://scienceportal.jst.go.jp/gateway/videonews/m200001002/index.html)
インターネット回線には、繊維状で、複数束ねることで大容量の光(情報)を通す「光ファイバー」が用いられています。しかし、情報を受け取り発信する側のコンピューターは、現状では従来の電子基板上のメタル配線に頼らざるを得ず、電力消費と性能向上は限界を迎え、データを効率よく受信できないなどの課題を抱えています。三上元教授は、これまでに光ファイバーの先端を45度に切って基板に垂直に挿入することで基板上の光配線へ光信号を送受信できることを発見しており、この技術を応用して紫外線硬化樹脂という透明なプラスチックを用いた直径50?(1?=1/1000mm)ほどの「光ピン」を完成させるとともに、大量生産に向けた技術も確立しています。光ピンを通じて半導体光チップと光ファイバーが効率よくつながることでデータを高確率で送受信できるようになり、通信速度も大幅に高速化。さらに消費電力も押さえられ、回路の簡素化も可能になりました。光ピンの技術は経済産業省のプロジェクトに採択され、アイオーコア株式会社が「光I/Oコア」を開発するなど、商品化も進んでいます。動画ニュースでは、これらの研究と今後の展望を図解やインタビューを交えて詳しく紹介しています。
三上元教授は、「最初はインクジェットプリンターとOHPシートを使って始めた製作法がだんだんと進化して、世界最先端の技術として工場のクリーンルームで大量生産される様子を見たときはとても感激しました。今回の動画ニュースを見て、研究に携わった卒業生も喜んでいますし、いただいたコメントなどのリアルタイムなリアクションは学生の励みや刺激になります。この技術がさらに応用されれば、回線速度が今以上に速くなり、5Gの通信システムが実現し、より速度の速いスーパーコンピューターが完成するなど、ドラスティックな社会変化が期待できます」と話します。現在も学生とともに研究を進めている三上元教授と光?画像工学科の藤川千栄美教授は、「学生からは私たちが思いつかないような発想が出てきます。一方的に何かを教えるのではなく、ディスカッションを大切にし、学生からの意見を方向付けていくことが私たちの責任。これからも研究を続けることで少しずつでも新しい成果を出し、学生たちには国際会議や論文の形で発表する機会を与え、特許出願にもつなげたい」と期待を語りました。
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写真提供=Science Portal(科学技術振興機構)