工学部機械システム工学科の砂見雄太准教授が代表取締役を務める株式会社SUNAMIが、巻取解析ソフトウェア「WIND MASTER」を開発?販売しています。SUNAMIは2020年12月に創業した大学発ベンチャーで、紙やフィルム、銅箔などの薄膜を大量生産するために広く用いられている「ウェブハンドリング技術」のうち、製品を巻取る際に発生しやすいしわや歪みなどを予測する「WIND MASTER」と試験装置の販売などを手がけています。9月29日には株式会社日本政策金融公庫と吉田幸雄税理士事務所の連携?協力により、ソフトウェアの機能拡張実現に向けた「新型コロナ対策資本性劣後ローン」を受けることが決まりました。
ウェブハンドリング技術は「ウェブ」と呼ばれる薄膜上の製品を、ローラを介して搬送し、延伸、塗装、裁断などを経て最終的に巻き取る技術で、従前より巻取工程の機械装置の設定条件は技術者の経験と勘で決められていました。一方で、ロール状に巻き取る際にしわがよる「スターディフェクト」や、ウェブの間に空気が入ることでロールがずれて傷がつく「テレスコープ」、表面に出っ張りがある「ゲージバンド」などさまざまな不具合が問題となっていました。ロールの内部応力の最適値を理論計算するモデルは学術的に確立されていますが、難解なため産業分野では活用が進んでいないことから、SUNAMIが「WIND MASTER」を開発しました。これによって巻取ロール品質の評価に重要な「半径方向応力」「円周方向応力」に加え、「巻取張力」やウェブ間の「空気層厚み」、ウェブの歪みに関する情報などの数値データを可視化でき、製造現場での実現賞に対する確かな理解に役立つとともに、ベテラン技術者が蓄積してきた技術のスムーズな継承もサポートできます。さらに、オプションで「ニップローラ」「空気巻き込み」「温度変化」「厚みムラ」の巻取解析ソフトウェアをつけることも可能になりました。
砂見准教授は、「新しい材料を開発する際や新たに巻き取りラインを立ち上げるときに正確な条件を導き出せるので、失敗が少なく余計なコストも減らせます。細かな数値を変えてデータを可視化し、解析結果を蓄積していくことで、この条件だと成功確率はどれぐらいかを導き出すこともできるようになります。ゆくゆくは海外版の販売も視野に入れ、よりよい技術を現場に提供していきたい」と話しています。