大学院工学研究科応用理化学専攻(原子力領域)1年次生のサラバラント?ファイサルさん(指導教員=工学部機械工学科?堺公明教授)が、11月21と22日に東京工業大学大岡山キャンパスを拠点にオンライン併用で開催された「第43回日本核物質管理学会年次大会」の若手?学生セッションで優秀発表賞を受賞しました。同学会は研究成果の発表とともに、最新情報の収集や意見交換、交流を図る場として毎年開催されているものです。
ファイサルさんの研究テーマは、「Developing of Nuclear Security Education Textbook for Universities in Saudi Arabia/サウジアラビアの大学における核セキュリティ教育教科書の開発」です。サウジアラビアでは、石油に替わるエネルギーとして2017年から原子力発電所建設に向けた開発計画が進んでいます。同国出身のファイサルさんは、国内の大学に原子力について学べる場所がほぼなかったことから、2018年から本学に留学。大学4年次生から堺教授の研究室に所属し、原子炉のリスク評価をなどの研究に取り組んできました。20年8月には、核不拡散?核セキュリティ総合支援センター(ISCN)と国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(JAEA)が主催する夏季実習プログラムに参加。核セキュリティ教育について議論した際に、「サウジアラビアには、原子力に関する知識を持った人材育成以前に、核セキュリティ教育が必要」と強く感じたことから、カリキュラムを構築するために必要となる教科書作りに着手しました。
初めに、サウジアラビアで学ぶ若い世代の年齢に近い意見を取り入れようと、本学工学部の学生を対象としたアンケート調査を実施。その結果をもとに、核セキュリティに関する基本的な知識をカバーする「核セキュリティ入門」、サウジアラビアの特性が核セキュリティや政治などに与える影響を学ぶ「サウジアラビアの核セキュリティ」、国際的な立場や考え方を学ぶ「核セキュリティによる現代社会が抱える問題」の3つを軸にしたテキストの構成をまとめました。
ファイサルさんは、「サウジアラビアと原子力の関係性を、あらためて多くの方に知っていただく機会になりました。今回の受賞は、JAEAの核セキュリティの専門家の指導や堺先生をはじめ研究室のメンバー、さらには自国からの留学生たちがアンケートに答えるなど親身になってサポートしてくれたことが結果につながったと考えています。今後は、既存の資料や情報を再評価して、母国の大学とともに教科書の開発を進めていく計画です。将来的には、核セキュリティを専門とした人材育成を支援したいと考えています。また、情報収集の過程でサウジアラビア以外にも核セキュリティ教育が不足している国があることも分かったので、各国の特性に合わせた教科書を作り、国際社会の発展に貢献していきたい」と話しています。