総合科学技術研究所が３月７日に、オンラインで「飛翔体の流れに関するシンポジウム」を開催しました。本研究所では、2018年度から流体工学分野をはじめさまざまな現象の「可視化」に取り組んでいる研究者を結集して「メソ領域における『流れ』の見える化」コンソーシアムを立ち上げています。本シンポジウムはその活動を含めた本学の流体工学を専門とする研究者の研究内容を紹介し、さらなる連携につなげる機会としようと実施しているものです。
当日は、初めに本研究所の岩森暁所長があいさつし、「特殊な流体を取り扱っている研究者が、互いの研究内容を共有することで研究の幅が広がる充実した時間になることを期待しています」と話しました。その後のシンポジウムでは５名の教員が登壇。堀澤秀之教授（工学部航空宇宙学科航空宇宙学専攻）が「超小型グリッドレスイオンエンジンの高性能化」と題して講演し、プラズマ推進機の高性能化に向けた超小型高性能ホールスラスタの研究開発を解説するともに、実験結果と粒子シミュレーションの結果が同じような値になったことをはじめ成果を報告しました。続いて、稲田喜信教授（同）が、上空から高速で海中に飛び込み魚を獲るカツオドリ科の鳥類が、水面突入に適した頭部形状に進化していった可能性に注目し、骨格の３?データから作成した模型を用いた水中突入実験について説明。加速度や衝撃力の計測から化石で見つかったカツオドリ科の祖先よりも現存種の方が小さな衝撃だったことを明らかにし、「原因解明のために数値流体力学を用いた解析を行う必要があり、形状と衝撃力の関係性を紐解き、人工物に応用していきたい」と話しました。
また、水書稔治教授（同）は「回転爆轟燃燃焼器の内部の爆轟波伝播の解明」をテーマに、航空宇宙機用の次世代エンジン候補として研究が進む爆轟エンジンについて解説するとともに、回転爆轟燃燃焼器の内部の爆轟波の伝播様態の可視化技術の確立や、直線型爆轟燃燃焼器などを用いた進行中の研究について報告しました。続いて、福田紘大准教授（同）が、流れ場の連側的な渦度の分布を計算することで時間的変化を解析する手法「渦法」の基礎方程式を利用した超解像技術によるアップスケールモデルの検討?検証結果を報告。低解像データからのアップスケーリングが可能なことなど研究成果を発表しました。最後に、沼田大樹講師（同）が「点回折干渉法を用いた飛翔体の可視化計測」と題して、汎用的に用いることが可能なPDI光学系構築手法の確立を目的に、NDフィルタ型ピンホールを用いたPDI光学系を構築した研究成果を解説。また、可視化した結果から評価した特徴などについて説明しました。
