健康学部健康マネジメント学科では7月10日に湘南キャンパスで、本学医学部卒業生で医師?小説家の南杏子客員教授による講義「高齢者の笑顔を守ること~患者?家族?医療者の思い」を行いました。本学科の選択必修科目「心理学」の授業の一環で実施したもので、1年次生を中心に約180名が出席しました。
動画で講義した南客員教授は初めに「高齢者『医療』とは?」をテーマに語り、高齢者人口の増加や高度医療が発達したことで増えた老衰や、人の最期を支える老年内科の仕事について説明。歩行困難、誤嚥性肺炎、認知症を引き起こす足、口、頭の3大フレイルについても解説しました。続いて「医療の現場で起きること」として、実際に自身が携わった患者の症例と、医師、看護師、家族の対応や思いを紹介し、「老衰は治る病気ではありません。生命活動を終える自然な経過であり、快適な老衰を支える生活や介護、医療が必要です」と話しました。高齢者医療は標準的な医療とは違っていいという発想を持つ大切さに触れ、「残された時間が必ずしも長くない終末期の患者さんには食事制限をするのではなく、おいしいと感じられるようにする。タバコや飲酒などを禁止するのではなく、好きな人とつながり、やりたいことができるように、ケアは尊厳が守られなければなりません。心地よく、幸せに死を迎えるための最適な医療を見つけ出す必要があります」と話し、「患者さんが笑顔であれば、医師、看護師、家族も『よかった』と感じられる」と結びました。
その後、学生たちは、授業を担当する菅野和恵教授(健康学部学部長)の進行でワークに挑戦。南客員教授が紹介した症例について、患者の思いや笑顔を支える方法などを考え、話し合いました。最後に菅野教授は、「講演の中で“つながりがある人の方が長生きする”という話がありましたが、皆さんにはこれからの4年間で、地域でつながりをつくる方法や考え方をしっかり学んでほしい」と語りました。受講した本学科の1年次生たちは、「命を守りたい医師と、自由に生きたい患者さんの間で思いが食い違うことがあるのだと知りました。患者さんに寄り添う大切さや異なる視点を知れてよかった」(川端登真さん)、「老衰は病気ではないという話が印象的でした。私は祖父母と同居しており、母は訪問看護の現場で働いているので、とても身近で興味深い話でした」(千葉葵さん)、「入院中の祖母は、孫の顔を見るだけで笑顔になってくれます。まずは高齢社会の現状を知り、どうしたら患者さんが笑顔になってくれるのか、自分にできることを考えていきたい」(小林恩さん)と話していました。