情報通信学部通信ネットワーク工学科の大東俊博講師が、このほど情報処理学会の2015年度山下記念研究賞を受賞し、3月10日から12日まで慶應義塾大学矢上キャンパスで開催された第78回情報処理学会全国大会で表彰されました。
同学会は、コンピューターとコミュニケーションを中心とした情報処理に関する学術?技術の進歩発展と普及啓蒙などを目的とする国際学会で、約2万名の会員が所属する日本有数の工学系学会です。山下記念研究賞は、年度内に研究会やシンポジウムで発表された論文の中から優秀な論文を選び、その発表者に授与されるものです。大東講師は、同学会「コンピュータセキュリティ研究会」における2015年度の研究発表会?シンポジウムにおける論文の中から、特に優れているとされた2件のうちの1つに選ばれました。
受賞した論文のテーマは「RC4に対する平文回復攻撃の改良」です。これは、インターネットや無線LANを安全に利用するために使われる暗号技術の中で、論文発表当時に最も大きなシェアを占めていたRC4暗号の詳細な安全性を解析したものです。従来の研究では平文(暗号化する前のデータ)の一部しか解読できないとされていましたが、大東講師らの研究グループは、異なる性質を持つ攻撃方程式を複数用いることで、事実上、全ての平文データが効率的に解読可能であることを理論的?実験的に示しました。暗号技術の安全性は、効果的な暗号解読法が存在するかどうかという議論を公の場で繰り返し行うことで評価されることから、大東講師らによるこの分析は、安全にネットワークを利用するための重要な成果とみなされています。
大東講師は、「若手研究者にとって目指すべきこの賞を受賞できたことを、大変うれしく思います。これを励みに、これからも暗号技術を中心に研究を進め、情報セキュリティの発展に寄与していきたいと思います」と受賞の喜びを話しています。