情報理工学部では、3月4日に湘南キャンパスで「情報理工学部紀要論文賞」の授与式を行いました。情報理工学部紀要に採録された論文の中で、優秀な研究に関する優れた論文を執筆した学生や教員を表彰しようと今年度初めて設けたものです。論文の新規性や有効性、完成度、先見性だけでなく、日常の学術活動などその他の業績も評価の対象とし、「奨励論文賞」(筆頭著者が学生)、「優秀論文賞」(筆頭著者が教員)を選定します。今回は藤田廉さん(大学院工学研究科修士2年次生)と野口晃寛さん(同1次年)、平田弘志教授(コンピュータ応用工学科)の「簡易STCを用いた車輪型倒立振子ロボットのVSS適応制御」が奨励論文賞に選ばれました(優秀論文賞は該当なし)。
電動立ち乗り二輪車セグウェイのような「車輪型倒立振子ロボット」は、人が乗る台と車輪の軸が固定されていないため制御しなければ倒れてしまいます。不安定系と呼ばれるこの対象をうまく安定化制御すると、アクセルやブレーキがなくても重心を変化させることで前後移動?旋回が可能な乗り物になります。「通常の制御は対象の特性が変化しないことを前提に設計されていますが、例えばジャンボ機の燃料が満タンか空かで重量が約2倍に変化してしまうように一定ではありません。そこで私たちの研究は特性が未知あるいは変化しても制御器を自動設計する適応制御と呼ばれる手法を用いているため、特性変化系に有効と期待されています」と平田教授。この研究では、VSS(可変構造系)手法を不安定系に導入すると同時に、セルフチューニング制御(STC)と呼ばれる適応制御器を用いる制御系を考案しました。平田教授は、「私たちの研究は、特性が未知の不安定な倒立ロボットを安定させながら自在に直進と旋回ができる制御法を提案した点がほかに類のない独創的な部分だと言えます」と話しています。