情報理工学部情報科学科の高雄元晴教授の研究室に所属する大学院工学研究科1年次生の銭場琉天さんと丸山裕さんが学部4年生の時に取り組んだ卒業研究がこのほど、「Diurnal modulation of pupillary light reflex(光瞳孔反射の日昼変動)」というタイトルで、国際誌『Light & Engineering』に原著論文として掲載されました。
高雄教授がアメリカ留学時に当時の指導教員とともにラット及びマウスで発見した内因性光感受性網膜神経節細胞(ipRGC)は、ヒトの網膜にも存在することがわかっています。銭場さんと丸山さんはヒトのipRGCの光反応性が一日の間でどのように変化するか研究し、朝が最も感度が高く、午後になると低下することを見出しました。ipRGCは概日リズムの光同調や光瞳孔反射に関わっていることが知られているとともに、概日リズムの光同調は昼間に生じにくいことが分かっています。本研究結果は、ipRGCの昼間の光反応性の低下が概日リズムの光同調の生じにくさに関わっていることを示唆していました。近年、照明工学分野において従来のように電気的?物理的効率ではなく、ヒトの健康や感情に重きをおいた人間中心照明という思想に基づいた照明設計がなされるようになってきています。この研究は将来的にこの思想にもとづいた照明設計の科学的エビデンスとして活用されることが期待されます。
銭場さんは、「卒業研究が国際誌に掲載されたことは、自分自身の大きな自信につながりました。これを励みにさらに研究に邁進していきたいと思います」と抱負を述べています。丸山さんも、「自分たちの研究が国際的に認められたことは大きな喜びです。努力を積み重ねることによって大きな成果を生み出す経験は、きっと将来の仕事にも活きてくると思います」と話しています。研究を指導した高雄教授は、「実験計画そのものは比較的単純なものですが、実際の実験の実施やデータ解析は大変な努力と忍耐を要しました。これらを成し遂げられたのは、二人の研究への情熱と集中力であったと思います。これらの力を生かして、これからも大きく成長してほしい」とエールを送っています。
論文:Senba, R., Maruyama, Y, Takao, M. Diurnal modulation of pupillary light reflex. Light & Engineering, 31(6), pp. 118–120, 2023.