歴史学科日本史専攻が知のコスモス「都市移住者の近代史―北陸地方と京浜地域の銭湯業―」を開催しました

文学部歴史学科日本史専攻では11月30日に湘南キャンパスで、知のコスモス「都市移住者の近代史―北陸地方と京浜地域の銭湯業―」を開催しました。都市は国内外を問わず、さまざまな地域からの移住者で構成されています。移住者の職種に特徴が見られる場合もあり、京浜地域の銭湯経営者のルーツは9割以上が北陸地方にあるといわれています。しかし、その実態はほとんどが明らかになっておらず、文献資料も乏しい状態にあります。そこで本専攻では、都市移住者の歴史について研究する横浜市都市発展記念館主任調査研究員の吉田律人氏を講師に迎えた講演会を企画しました。

当日は、学生や教職員、地域住民ら約30名が来場。冒頭で本専攻の畑中彩子専攻長代行が、開催趣旨や吉田氏の経歴などを紹介しました。吉田氏はまず、日本の銭湯文化について、浮世絵や文献を用いて説明。「1868年の江戸幕府の崩壊後、無秩序に銭湯の数が増加していきました。1923年の関東大震災では大規模な火災も発生し、東京?横浜の大部分が崩壊。復興と合わせた工業化により、労働者が必要となったことから多くの移住者が生まれました」と語りました。さらに、「京浜地域には、銭湯業で財を成した人物が現れ、大親分として血縁?地縁者の独立を支援。彼らが同郷同職者となったと考えられます」と説明しました。一方で、この事実を証明する文献が少ないことから、「私は北陸地方の神社を巡り、寄進物に彫られている名前を集めて当時の銭湯組合員名簿と照合し続けました。合致するものが非常に多いことから、彼らが北陸地方からの移住者であること、そして郷里への思いを強く持っていたことが分かりました」と説明しました。講演終盤では、「今年1月に発生した能登半島沖地震で、彼らの名前が彫られた寄進物も数多く被害を受けました。現地で崩壊した灯篭や鳥居を見て涙が出るほど悲しく、失われていく歴史にスポットを当てことも、私たちの重要な役割だと改めて感じました」とまとめました。