本記事では、4年次生の阿部悠希さん(山本志都教授ゼミ)が執筆した2024年度の卒業論文「日本人イスラム教徒の宗教的実践と世俗的価値観のバランス ─ 信仰と日常生活の調整における挑戦と適応 ─」を紹介するとともに、阿部さんの本学科でのキャリア形成についてお伝えします。
阿部さんの研究では、日本の非イスラム教徒家庭に生まれ育ち、後にイスラム教に改宗した日本人女性を「日本人改宗ムスリマ」と定義し、彼女たちがイスラム教の教えと日本社会の価値観の間でどのように折り合いをつけているのかを探りました。
調査のため、阿部さんは19歳から44歳の日本人改宗ムスリマ6名にインタビューを行いました。その結果わかったこととして、まず改宗のきっかけでは、海外旅行やイスラム教徒の方との交流が多く挙げられました。次に、日常生活で直面する課題では、イスラム教の教えに基づく服装に関する印象的なエピソードがありました。たとえば、「(都会の)街中では問題ないが、地元ではヒジャブ姿が目立たないように心がける必要がある」や「ニカブ姿で外を歩くと、一挙手一投足を見られているように感じる」、「(飲食店で)海外の人と思われる」などの話が聞かれ、信仰と社会の間での葛藤が浮き彫りになりました。また、「子どものスクール(幼稚園)のクリスマス会に参加できない」という声からは、日本では宗教と切り離して考えられるイベントでも、改宗ムスリマにとっては参加をためらう場面があることもわかりました。
しかし日本人改宗ムスリマたちは、イスラム教の教えを守りながらも、日本社会の価値観や習慣と折り合いをつけるために柔軟な工夫をしていることも明らかになりました。たとえば、周囲との調整をはかるために、「お昼の礼拝の許可を得る」や「外食時に事前にハラール対応の店を調べ、成分表をチェックする」などしています。そして、「(ヒジャブをつけて学校に行くと)いいじゃんと言ってもらった」や「嫌なことが起きても、次につながっていると考えられるようになった」といったポジティブな変化も報告されています。阿部さんの研究は、日本人改宗ムスリマが直面する課題と、それに対する実践的な工夫や適応を明らかにし、多様な価値観が共存する社会のあり方を考える上で貴重な示唆を提供しています。


阿部さんは在学中、bet36体育投注_bet36体育官网app-在线*开户チャレンジセンター(bet36体育投注_bet36体育官网app-在线*开户チャレンジセンターの詳細はコチラ)の国際交流ボランティア組織「Tokai International Communication Club」(TICC)でリーダーを務め、また本学の留学制度を活用してアメリカのワシントンD.C.で4カ月間のインターンシップを経験しました。そして、2025年4月からは専門商社に就職し、新たなキャリアをスタートさせます。


今後の目標について伺うと、阿部さんは次のように語ってくれました。
「1年目から海外に出られる会社を選びました。まずは海外営業の仕事を身につけることを目標にしています。将来的には海外での就職も視野に入れており、大学院進学の可能性も含め、専門性を高めながらキャリアを築いていきたいです」
阿部さんが異なる文化との共創を実現する第一歩を踏み出したことを心から応援しています。

