文学部文芸創作学科の堀啓子教授の著書『日本ミステリー小説史 黒岩涙香から松本清張へ』がこのほど刊行されました。ベストセラーが次々と生まれる推理小 説。それらを原作にした映画やテレビドラマがヒットするなど、現代日本はミステリー大国といっても過言ではありません。本書は、欧米で誕生したミステリー がどのように日本にもたらされ、受容されてきたのか。わが国における普及と定着の歴史を、明治、大正、昭和の時代背景とともに解明していきます。
日本ミステリーの黎明期に海外の作品を紹介した翻訳者たちの苦心ぶりや、「探偵小説の父」と称された黒岩涙香の功績をはじめ、尾崎紅葉や徳富蘆花、岡本綺 堂に谷崎潤一郎、泉鏡花ら、世に名を残す文豪たちとミステリーとの意外な関わりなど、知られざる逸話も数多く紹介。先人が開拓した豊かな土壌を受け継いだ 江戸川乱歩、横溝正史、松本清張らのその後の活躍と、ミステリー大国誕生のバックグラウンドを知ることができる通史となっています。
堀教授は、「日本近代文学、比較文学を専門分野としていますが、ことに明治期の文学をいろいろと調べていくと外国小説の影響、とりわけミステリー色を強く 受けているものがあることに気づかされます」と話します。「今回、日本におけるミステリーの歴史を総括してみましたが、その面白みは作者や成立背景、執筆 の経緯などにもあると思います。時代のニーズに合わせた題材や文体など、どの作家も大変苦労してきました。それでも努力と研鑽を積み、後続に道を作って いったのです。歴史をひもとくことでミステリーファンの方に知らなかった! 面白い! と親しみを感じていただき、さらにミステリー好きになっていただけ ればうれしいかぎりです」と発刊への思いを語っています。
【出版物概要】
書名:『日本ミステリー小説史 黒岩涙香から松本清張へ』
著者:堀啓子
出版社:中央公論新社
定価:950円(本体880円)
版型:新書版
頁数:288ページ