文学部では、14学科?専攻の特色を生かし、人間や社会の基礎となる「言葉」「時」「人」をテーマとして学ぶオムニバス授業「知のフロンティア」を今セメスターから開講しています。今年度はその第一弾として、「言葉についての14章-人間にとって言葉とは何か」を開講。毎回、歴史学や言語学、人類学などを専門とする教員14名が交替で50分間講義し、後半の30分間で関連するレポートを作成することで、自ら考えることの大切さを学んでもらう構成となっています。
このうち、6月22日には立石謙次講師(歴史学科東洋史専攻)が、中国南部に住む少数民族「ペー(白)族」を主な例に、多民族国家の中でどのように言語が維持され、また消失していくのかについて講義。ペー族は自分たちが文字を持たない民族であるという意識が強く、万葉仮名のようにペー語の音に漢字を当てた「老白文」が一部で用いられているほか、1993年には新白文という文字がつくられたものの普及していないことをはじめ、「中国社会の中で生きていくためには独自の言語を使うメリットが少ないため、不要論を唱える知識人もいる」といった現状について語りました。また7月6日の授業では、成田広樹講師(英語文化コミュニケーション学科)がアメリカの言語学者ノーム?チョムスキーが提唱した生物言語学について講義。全ての人は生まれ育った環境に適応して何らかの言語を獲得する能力(言葉の種)を持っており、他の動物にはそれがないと説明した後、人間だけが無限の長さを持つ言葉を使う能力があることや、他者が自分と違う信念を持っていることを理解する能力があることを解説しました。
それぞれの講義終了後には、「人間が言語を持たなかったらどんな生物となっていたか」などを考える課題に挑戦。学生たちは講義の内容を踏まえながら自分なりに考え、レポートを作成していました。
学生たちは、「各分野を極めている先生方の講義を通して、これまで考えても見なかった視点から言葉をとらえなおす機会にもなり、とても楽しく学べています」、「さまざまな先生の講義を聞けるのが何よりの魅力だと思います。自分がこれまで意識していなかった分野でも興味がわく講義もあり、関心の幅も広がっています」、「言葉の根源的な要素はどこにあるのかを考えるなど、言語を中心に社会を考えるよいきっかけになりました」と話しています。
授業の運営を担当する松本建速教授(歴史学科考古学専攻)は、「さまざまな分野について学び、新しい世界に触れる経験を通して、ものの見方が変わっていくことやその楽しさを実感し、自分の存在の広さ、可能性の大きさを感じてもらいたい。この授業をきっかけに、学生たちが自分なりに積極的に学びを広げていってくれることを期待しています」と話しています。