歴史学科西洋史専攻では「知のコスモス」講演会「災害の歴史化の虚実―ローマ大火とロンドン大火を例に―」を開催しました

文学部歴史学科西洋史専攻では11月7日にオンラインで、文学部「知のコスモス」講演会「災害の歴史化の虚実―ローマ大火とロンドン大火を例に―」を開催しました。今回は古代ローマの首都ローマ、近世イギリスの首都ロンドンで発生した壊滅的な大火を題材に、本専攻の大谷哲講師と菅原未宇准教授が講演。その際の当局の対応やパニック、デマの流布など人々の反応をまとめた史料などを読み解き、当時の社会や人心のありかたの歴史を探りました。

当日は、学生や教職員らが多数聴講。まず、菅原准教授が「誰が災害を語るのか?~ロンドン大火の叙述をめぐる混乱」をテーマに、1666年に発生したロンドン大火について語り、市民や政府、郊外に住んでいた住人らさまざまな立場の人々が残した書物や手紙などの分析結果を報告。「ロンドン大火はパン屋のかまどが出火原因でしたが、その事実が判明するまでは他国による犯行などさまざまな憶測が飛び交っていたことがわかってきた」と発表しました。続いて登壇した大谷講師は、「皇帝ネロの大火とキリスト教徒迫害~歴史家タキトゥスの叙述の検討」をテーマに、西暦64年に起きた「ローマの大火」について解説。当時の様子を記した歴史家タキトゥスによる叙述は、修正されたような痕跡があることが近年になって分かってきたことから、「本当の真実は今を生きる私たちにはわからないが、残された史料にも疑うべき点があるのではないでしょうか」と語りました。

講演会後には参加者からの質問も多く寄せられ、活発な議論が交わされました。