知のコスモス講演会「『記憶』を『記録』する:次世代へのメッセージ~抑圧と差別の記憶はどう受け継がれてきたのか?~」を開催しました。

文学部文明学科では11月16日にオンラインで、知のコスモス講演会「『記憶』を『記録』する:次世代へのメッセージ 第2回オンライン講演会~抑圧と差別の記憶はどう受け継がれてきたのか?~」を開催しました。ハンセン病家族訴訟などについて、継続的に支援活動を展開する浜崎眞実氏(「ハンセン病に係る偏見差別の解消のための施策検討会」委員/カトリック横須賀三笠教会主任司祭)を講師に招き、ハンセン病家族訴訟や国立ハンセン病資料館(多磨全生園)の展示内容などについて講演していただきました。

当日はオンライン会議システムを「Zoom」を使用し、学生?教職員を中心に一般参加も含め約30名が参加しました。初めに、同学科の李賢京准教授があいさつし、「春学期では歴史という記憶をどのように残していくかをテーマに講演会を開きました。今回は、『抑圧と差別』という問題をどのように記録すべきかをテーマに、ハンセン病やハンセン病療養所問題について講演していただきます。浜崎さんの話からどのように後世に残すのか考えるきっかけにしてください」と話しました。

講演では、浜崎氏がハンセン病とハンセン病問題の違いについて説明し、「疾患とは病理学的な機能不全のことで、病とは文化的?社会的規範から逸脱していると見られている状態を指します。ハンセン病は疾患であり、ほとんどが治癒しているにもかかわらず、今なおハンセン病歴者に対する差別が根強く続いています。社会の差別?偏見によって、平穏に生活する権利を侵害されているのを未だに解決できていないのが「ハンセン病問題なのです。現代を生きる私たちは、疾病と病を理解して区別することが重要です」と語りました。また、ハンセン病歴者との出会った実体験について話し、「私も実際にハンセン病歴者と出会ったことで、ハンセン病ついての考えや価値観など認識が大きく変化しました。2019年6月に判決が出たハンセン病家族訴訟では、差別を受ける社会構造があったことが認められています。心の問題ではなく社会構造として、ハンセン病病歴者に対する偏見?差別がつくられてしまっているのです。ハンセン病歴者を見たことも出会ったこともない学生さんたちは、偏見や差別の持ちようがないと感じるかと思いますが、差別が社会構造として存在しているということは、どんなに優しく良い人でも加害の立場に立たされる可能性があります。個人の心の問題ではないからです。関心をもって向き合うことで、記憶や認識に変化が訪れてくれれば」と話しました。

講演後には、参加者間での意見交換の時間も設けました。一般参加者から学生に「ハンセン病について学生はどのようなイメージをもっていますか」という質問があり、学生は「名称は知っていましたが、この講演を聞くまで差別問題のことすら知りませんでした。スタジオジブリの映画『もののけ姫』で、ハンセン病患者が隔離されたタタラ場で顔を隠して働いているシーンがあり、その印象が強くあります」と返答。これに対して浜崎氏は、「アニメ作品を通してハンセン病を知ることは第一歩でしょう。その時には気づかなかったことも人との出会いや経験などを通して、新たな見え方?捉え方が出てくることもあります。現代社会を生きる1人として、ハンセン病だけでなく何事にも当事者意識をもって生活してください」とメッセージを送りました。