教育研究上の目的及び養成する人材像
水産学科の教育研究上の目的は、大学?学部の教育目的に沿って、水生生物を食品の源ととらえ、その生態と生活環境、保護育成や増養殖などの水産資源に関する知識を有し、生物の多様性を維持した生物資源の持続的な利用に貢献できる知識と技術を備え、かつ食品の加工?製造、食の安全?安心に関する知識と技術を身に付けた、計画力と実践力に富み、生物と人との関わりを考慮できる社会貢献度の高い人材を養成することです。
3つのポリシー
1ディプロマ?ポリシー
海洋学部水産学科では、以下の能力を備えたと認められる者に学位「学士(海洋学)」を授与します。
世界の漁業と養殖業を合わせた生産量は2019年に2.1億トンを超えました。このうち、漁業生産量は横ばい傾向であるのに対し、養殖生産量は急激に増加しており、その割合は全体の56%に達しています。また、漁業の対象となる水産資源のうち、持続可能な資源は66%に留まり34%は過剰利用または枯渇状態となっています。周りを海に囲まれた我が国にとって、水産資源は極めて重要な食糧資源です。したがって、厳しい国際情勢に対応していくためには、最先端の養殖と資源管理技術を持ち、限りある水産資源を持続的に利用していくことが不可欠となっています。
このような時代のニーズに応えるため、海洋学部水産学科では、水産資源の利活用を学ぶ食品科学コースと、水産生物の生態や増養殖を学ぶ生物生産科学コースの2コースを設けています。両コース共通の水産基礎教育を通じて水産に関する幅広い知識を身につけさせ、そして各々のコースで展開する専門分野の教育を通じて応用知識と技術を習得させます。具体的には、国や自治体の水産技術職員、水産をはじめとする食品メーカーの研究開発職員、後進育成を担う中学?高校教員など、水産業界や学校教育の場で活躍できる人材の育成を目標とします。大学?学部の学位授与方針に従い、以下の能力を備えたと認められるものに学位を授与します。
知識?理解
水産全般にわたる 科学的な基礎知識を基盤とし、水産資源を含む海洋資源の保全と、その持続可能な形での利用(SDGs14) のため、以下①~⑤に示す、水産資源の保全?増養殖から食品等への利活用に至る先端的な知識や技術を有する。
- プランクトンやサンゴなど海洋生態系の基盤を成す生物群と水産資源の関連性
- 希少生物や深海生物を含む水産資源とその増養殖
- 水産資源枯渇問題などを解決するための環境保全対策
- 未利用魚を含む水産資源に含まれる成分の食品や医薬品等への利活用
- HACCPに基づく安全安心な食品製造?開発と美味しさや品質保持
汎用的技能
水産基礎?応用教育を通じて様々な知識を修得し、その体現である実験や実習、卒業研究を介してデータ解析力、課題解決力、プレゼンテーション能力、チームで働く力 を高め、実社会で普遍的に活用できる論理的な思考力と実践力を有する。
態度?志向性
様々な情報 を元に状況を把握し、その分析によって適切な目標を設定して具体的計画を立案する能力、チームワークを駆使して目標を成し遂げる力、倫理観を有し、市民として社会の発展のために寄与できる力を有する。
2カリキュラム?ポリシー
海洋学部水産学科が定めるディプロマ?ポリシーに基づき、以下に示す教育課程を編成し、実施します。
教育課程?学修成果
本学科のカリキュラムでは、初年次に「科学表現論」で科学的な思考及び表現方法を学びます。また、導入科目に当たる「水産通論」および「入門ゼミナール」により、水産学の基礎を学び、2年次以降の学修の方向性を考えさせます。また、関連する技術の基礎を身につけさせる ための実験科目として、「生物学実験」と「化学実験」を履修させます。そのほかにも、水産学科として必要な基礎知識に関する科目群を学科目「水棲生物の基礎知識」や「水産学の基礎知識」として開講しています。
食品科学コースでは、「水産食品学総論」や「水産食品学実習」などの基礎科目を学びながら、「水産利用学」、「食品栄養学」、「食品衛生学」、「食品製造学」などを通して、生物生産科学コースでは、「水産増殖学」、「漁業資源学」、「保全生態学」などで水生生物の増える仕組み、水圏生態系、環境との関連を学び、「魚病学総論?各論」や「水産餌料?栄養学」などを通して、水生生物を資源として持続的に有効利用するための実務的な応用知識を修得するとともに、汎用的技能である論理的思考力を養っていきます。
さらに実践力を身につけるために、食品科学コースでは、「食品化学実験」、「微生物学実験」および「食品製造学実習」といった独自性の高い専門系実験?実習の3科目を、生物生産科学コースでは、「魚類学実験」や「資源生物学実験」などの実験7科目を開講しています。これらの実験や実習科目を通して、能動的に学習しつつ実践力を習得していきます。また、「海洋実習3」により、水生生物資源の持続的利用のための知識?技術を修得し、チームで働く力 を高めて、汎用的技能を身につけていきます。
最終年次には、総仕上げとして、卒業研究科目に取り組みます。研究の考え方や解析方法、科学論文の書き方、プレゼンテーションの方法などを、教員から個別に指導を受けます。これらの卒業研究科目は、単に知識や技術の修得だけが目的ではなく、様々な活動を学生同士で行いながら、社会貢献度の高い計画を自ら考えて立案し、チームワークを駆使して実行できる高い社会性を持った態度と志向性を身に着けさせます。またサマーセッションにHACCP実務管理論があります。HACCP実務管理論では食品工場における衛生管理の実践的な思考を身につけ、HACCP実務管理者の資格を得ることができます。
学修成果の評価方法
水産学科のディプロマ?ポリシーに示されている「知識?理解」「汎用的技能」「態度?志向性」に関して、ルーブリックによる観点別評価、修得単位数?GPAによる分析評価、授業についてのアンケート等を用いた学生による自己評価により、学修成果の評価を行っています。その集計結果は、FD活動等をとおして教育の質向上のためのPDCAサイクルにつなげています。
3アドミッション?ポリシー
求める学生像
海洋学部水産学科の教育目標を理解し、この目標を達成するために自ら学ぶ意欲をもった人材。及び、ディプロマ?ポリシーで求められている能力を、身に付けられると期待できる基礎学力を十分有する人材。
入学者にもとめる知識?技能?思考力?判断力?表現力?態度
(1)知識?技能
英語では、高校での英語科目の履修を通して英語の文章理解力、表現力、コミュニケーション能力を身につけておくことが望ましい。
数学では、高校での数学科目の履修を通して公式や計算方法を理解した上で、それらを応用できる能力を身に着けておくことが望ましい。
理科では、高校での理科科目(物理、化学、生物、地学)の中から数科目を選択し、個々の項目の内容を理解していることが望ましい。
国語では、読解、文章作成を行う上での文構成の理解技能と表現力を身に着けておくことが望ましい。
社会では、理系の学問を学ぶ上で必要な文化的な知識を幅広く理解していることが望ましい。
(2)思考力?判断力?表現力
水生生物を生物資源として持続的に活用するために、多様な水生生物についての科学的な基礎知識と水生生物の保護?育成?食品への利活用、水圏環境の保全などの広範な科学の知識を総合的に思考し判断?表現できる力が期待できること。
(3)主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度
多様な価値観や立場?役割を理解し、自らが社会の一員であることを認識し、水圏環境システムや食品が有するさまざまな課題に対して主体的に取り組むことが期待できること。