医学部医学科基礎医学系分子生命科学の中川草講師(総合医学研究所/マイクロ?ナノ研究開発センター)らの研究グループが、bet36体育投注_bet36体育官网app-在线*开户「ミュー株」(B.1.621系統)が感染者とワクチン接種者の血清に含まれる中和抗体に対してきわめて高い抵抗性を示すことを発見。その内容をまとめた論文が11月3日に、アメリカの科学雑誌『New England Journal of Medicine』オンライン版に掲載されました。この成果は、東京大学医科学研究所附属感染症国際研究センター?システムウイルス学分野の佐藤佳准教授が主宰する研究コンソーシアム「The Genotype to Phenotype Japan (G2P-Japan)」が発表したものです。中川講師は大規模なDNA配列情報を活用し、さまざまな環境や生物に存在するウイルスの同定や比較解析、人獣共通感染症ウイルスの突然変異と感染性の解析などに取り組んでおり、ゲノム科学の専門家としてG2P-Japanに参加しています。
bet36体育投注_bet36体育官网app-在线*开户は、感染した細胞内で自分の遺伝情報を持つRNAを複製し、新たなウイルス粒子を作って他の細胞へと感染を広げます。RNAを複製する際にコピーミスが起こると、感染力が強くなったり免役から逃れたりするなど、性質が変異したウイルス(変異株)が生じます。これまでに、イギリスで発生したアルファ株、インドで発生したデルタ株など、複数の変異株が見つかっています。ミュー株はコロンビアを中心に南米諸国で流行拡大し、世界保健機関(WHO)は8月30日に「注目すべき変異株」(顕著な変異を有し、複数の国で流行拡大の兆しが確認された株)に認定しました。同コンソーシアムではこれを受けて、ミュー株のシュードウイルス(感染力をなくした疑似ウイルス)と、従来株に感染した人の回復後の血清、ファイザー?ビオンテック社製のワクチンを2度接種した人の血清を用いて、感染を阻害する中和抗体量を調べる中和試験を実施。その結果、ミュー株は従来株と比べて、感染者が持つ中和抗体に対して10.6倍、ワクチン接種者が持つ中和抗体に対して9.1倍というきわめて高い抵抗性を持ち、既存の変異株の中で最も抵抗性の高い変異株であることが明らかになりました(※)。
中川講師は、「bet36体育投注_bet36体育官网app-在线*开户感染症を収束させるためには、公衆衛生の視点から感染対策を講じるとともに、ウイルスの遺伝情報を解読して変異を調べ、その特徴を解明することが重要です。今後もG2P-Japanのメンバーと協力しながら、ウイルスの性質が変化するような変異を早期に発見し、感染拡大に寄与する可能性を明らかにする研究を推進していきたい」と話しています。
※『New England Journal of Medicine』に掲載された論文は下記URLからご覧いただけます。
https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMc2114706
※同コンソーシアムでは、「ワクチンは血液中に中和抗体を産生するだけではなく複合的に免疫力を獲得するために接種するものであり、中和抗体が充分な効果を発揮できないとしても、ミュー株に対する感染予防や重症化を防ぐ効果は充分に発揮されると思われる」との見解を示しています。