医学部付属東京病院の西﨑泰弘副院長(医学部教授)を中心とする研究グループとカゴメ株式会社ではこのほ ど、ブロッコリーの新芽(ブロッコリースプラウト)に含まれる機能性成分「スルフォラファン」※を継続的に摂取することによって肝機能が改善されること を、γ-GTPなどの肝機能マーカーの値が高い男性を対象とした試験で明らかにしました。ヒトを対象にスルフォラファンの肝機能改善効果を示した報告は、 世界でも初めてと思われます(カゴメ調べ)。この成果は11月27、28日に開かれる第40回日本肝臓学会東部会で、「肝機能異常を伴う脂肪肝陽性者に対 するブロッコリースプラウトの有効性に関する検討」のタイトルで発表する予定です。
肝臓は、私たちの体内に入ってくる無数の化学物質を無害な物質に変換(解毒)することで、健康な状態を保っています。暴飲暴食や喫煙などの生活習慣 をもった人や環境汚染が深刻な地域で生活する人の肝臓は、日々多くの化学物質にさらされ解毒が滞ってしまいます。その化学物質が酸化ストレスの増大や炎症 を惹き起こすことで肝臓の細胞を損傷し、それが肝機能異常の原因となります。肝機能マーカー(ALT、AST、γ-GTP)の値が正常範囲よりも高く、肝 機能異常と診断される人は、現在、成人の約3割。自覚症状がないまま重篤な状態に陥ることもあるため、定期的なチェックと早期の改善が望まれます。しかし これまで、特定保健用食品のような科学的根拠に裏付けられた、肝機能改善に有効な食品は明らかではありませんでした。
スルフォラファンは、肝臓が自ら持つ防御機構(解毒、抗酸化、抗炎症)を高めることで、肝機能を改善すると考えられます。本研究では、カゴメによる 基礎研究で肝機能の改善効果が期待されたスルフォラファンについて、より確かな科学的根拠を得るため、ヒトを対象とした試験によりその有効性を検証しまし た。試験では、東京病院に通院する患者で肝機能マーカーの値が高い男性を対象に、事前に試験計画を十分に説明し、同意を得られた方52名を被験者としまし た。被験者を2群に分け、片方の群(スルフォラファン群)には、スルフォラファンの前駆物質であるスルフォラファングルコシノレート(SGS)を1粒あた り10 mg含むカプセルを1日3粒、2カ月間摂取し、もう一方の群(プラセボ群)には、SGSを含まないカプセルを同様に摂取してもらいました。前後に検査を実 施し、肝機能障害にかかわる肝機能マーカー等を測定。その結果、スルフォラファン群では、ALTおよびγ-GTPの値が統計学的に有意に改善していること が判明した一方、プラセボ群では有意な変化は認められませんでした。この結果、スルフォラファンを継続的に摂取することで肝機能が改善される可能性が明ら かになりました。
西﨑教授は、「肝臓は人体における代謝の中心臓器であり、肝機能の優劣、特に脂肪肝の程度がメタボリック症候群や生活習慣病を左右するといっても過 言ではありません。基礎実験では肝機能改善の可能性が示されていましたが、今回ヒトで実証されたことは大変意義深く、肝臓専門医の立場からも期待が持てる と実感しています」とコメントしています。
※スルフォラファン=アメリカにあるジョンズ?ホプキンス医科大学のポール?タラレー博士らにより、がん予防効果が期待される成分としてブロッコ リーから発見されました。これまでの研究で、ブロッコリースプラウトに多く含まれており、解毒作用や抗酸化作用、抗炎症作用などを示すことから、さまざま な疾病の予防?改善に有効である可能性が多数報告されています。
■参考URL:カゴメ株式会社HP
http://www.kagome.co.jp/company/news/2014/11/002101.html