医学部医学科基盤診療学系の西﨑泰弘教授(医学部付属東京病院院長)の研究グループが2018年に実施した、本学陸上競技部駅伝チームの選手を対象とした臨床試験で、天然アスタキサンチンの摂取が筋肉疲労の軽減に有効であることを確認。この結果を、6月14日から16日までパシフィコ横浜で開かれた日本抗加齢医学会総会で、管理栄養士として携わった同学系健康管理学の菊地恵観子研究技術員が発表しました。
エビなどの甲殻類やサケなどに含まれる赤橙色の色素であるアスタキサンチンには、抗酸化および抗炎症作用があり、健康食品として広く研究が進められています。これまで持久力向上や筋肉損傷軽減など、アスリートにとっての有用性が期待できる複数の効果が報告されてはいるものの、日本のトップアスリートにおける検討は十分ではありませんでした。そこで本学では、医学部と医学部付属東京病院、体育学部、天然アスタキサンチン製品を世界中に供給しているアスタリール株式会社による共同研究グループを結成し、駅伝チームに所属する1年次生から3年次生の選手30名を対象に、18年8月から10月にかけて臨床試験を実施しました。5000m走のタイムが等しくなるよう2群に分け、試験群ではアスタキサンチンカプセル(フリー体アスタキサンチン換算量として1日12 mg)、対照群ではアスタキサンチンを含まないプラセボカプセルを、各8週間服用。期間中は、採尿、採血、バイタルサイン、問診などを行ったほか、ウェアラブル端末を使って活動量を測定しました。試験群では摂取8週後において、問診項目「疲労の回復速度」「筋肉痛」「身体の重さ」が有意に改善、あるいは改善の傾向を示したほか、運動による筋肉損傷を軽減することが判明しました。
管理栄養士の立場からデータの収集?解析を担当した菊地研究技術員は、「今回の臨床試験はトップレベルで活躍する選手が集まる東海大だからこそできた研究。発表会場には立ち見の方もいたことから、多くの注目を集めていると感じました」と振り返ります。西﨑教授は、「今年1月の箱根駅伝で初の総合優勝を成し遂げたメンバーも数名が対象となっていたことから、選手のパフォーマンスに影響を及ぼさないよう細心の注意を払いました。特に両角速駅伝監督(体育学部准教授)の協力はとても大きく、試験をスムーズに進めることができ、グループの総合力を発揮できたと感じています。今の日本に求められている、“いかに薬を使わず健康体にするか”という課題解決に向けて、これからも研究を展開していきたい」と語りました。
※本試験で用いた天然アスタキサンチンを配合したサプリメントは、すでに市販されており、アンチドーピング認証であるインフォームドチョイスを取得しています。