医学部医学科の小路直教授(外科学系腎泌尿器科学領域/医学部付属病院腎泌尿器科診療科長)がこのほど、『名医に聞く「前立腺がん」の最新治療』(PHP研究所)を出版しました。前立腺がんの多くは初期の段階で診断され、約8割は転移のない早期のがんとされていますが、手術による摘出や放射線治療によって排尿や性機能の低下を招くことが課題となっています。本書では、前立腺がんの基礎知識や標準的な診断?治療法について解説。さらに、排尿機能などを温存できる治療として厚生労働省から先進医療(※)に指定され、本病院でも実施している「前立腺がん標的局所療法」について、実際に治療を受けた患者さんの体験談を交えて分かりやすく説明しています。
第1章と第2章では、前立腺と前立腺がんに関する基本的な事項について説明。第3章では早期発見に有用な腫瘍マーカー「PSA」や、がんの位置や大きさをより正確に特定できる診断法「核磁気共鳴画像―経直腸的超音波画像融合画像ガイド下生検(MRI―TRUS融合画像ガイド下生検)」を紹介しています。第4章、第5章では前立腺がんの進行と標準治療、第6章では、排尿や性機能を可能な限り温存できる治療として小路教授が初めて日本に導入した「高密度焦点式超音波療法(HIFU)を用いた前立腺がん標的局所療法(フォーカルセラピー)」について解説。第7章では、治療方針を決定する際の留意事項について述べています。
小路教授は、「からだへの負担が少なく短時間で完了し、排尿などの機能を温存してQOL(生活の質)を維持できる治療の実現を目指して、研究や臨床に取り組んできました。本書は、医師として患者さんに寄り添い、共に病気に対峙するために、研究成果や知識を役立てたいと考えて執筆しました。病気と向き合う際に大切なのは、自分の状態や診断?治療法を確認し、理解した上で、疑問を持つことです。患者さんが本書を参考にして前立腺がんへの理解を深め、主治医や家族と話し合って前向きに治療に臨まれるよう願っています」と話しています。
※先進医療
最新の医療技術の有効性や安全性などを臨床現場で評価し、健康保険適用の可否を判断する制度。先進医療に認定された医療技術による治療は一定の施設基準を満たした医療機関のみで実施され、健康保険診療との併用が認められる。