医学部付属病院が「身近な運動器疾患」をテーマに市民公開講座を開催しました

医学部付属病院では10月12日に伊勢原キャンパスで、「身近な運動器疾患―脊柱そくわん症とひざ関節症―」をテーマに市民公開講座を開催しました。本病院では、地域の人々の健康増進に寄与するため、毎月、公開講座を実施しています。今回は、日常生活動作(ADL)や生活の質(QOL)に影響を与える背骨とひざの疾患について、整形外科の医師2名が解説。患者や家族、医療従事者ら多数が参加しました。

初めに、渡辺雅彦病院長(医学部医学科外科学系整形外科学領域主任教授)が登壇。「年齢を重ねても健康で自立した生活を送るためには、認知症などの予防に加え、運動器の機能を維持することも重要です。今日の講演を皆さんの健康に役立ててください」とあいさつしました。

前半は酒井大輔教授が、「脊柱そくわん症の保存治療(装具、リハビリ)から最新手術まで」をテーマに、背骨が左右に曲がってねじれ、痛みや内臓への影響が生じる脊柱そくわん症の原因や症状の進行に応じた治療法について解説。手術によってスポーツ選手として復帰した10代の女性を例に、適切なタイミングで適切な治療をする大切さを強調しました。また、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症といった、加齢とともに増える脊椎疾患と治療法についても説明。「進行を抑えるためには、筋力を維持し、よい姿勢を保つことが大切」と語り、姿勢のセルフチェックや効果的なストレッチを紹介しました。

後半は佐藤正人教授が、「変形性ひざ関節症に対するPRP(多血小板血漿)療法)」と題して講演。加齢などによる軟骨の損傷によって発症する変形性ひざ関節症が運動器障害の約半数に及ぶことを紹介し、軟骨を修復再生させる「軟骨細胞シート」の移植手術について説明しました。また、自分の血液から有効成分を取り出してひざに注射する「PRP療法」についても解説。治療薬としての国の承認を目指し、人に投与して効果と安全性を調べるために本病院が進めている医師主導治験の対象者や方法を紹介しました。最後に、品質や安全性、有効性が不明で法的に認められていない細胞加工物を用いた治療に対する注意を呼びかけました。

講演後は、渡辺病院長が来場者への謝辞を述べ、「症状は同じでも、病態は患者さんによって千差万別です。本病院では患者さんと相談し、一人ひとりの状態や生活様式に合わせて治療しています。今後も、皆さんにとってより近く、よりよい病院であるよう努めていきます」と結びました。

参加者からは、「腰とひざの両方に不安を抱えていますが、さまざまな治療法があると知り勇気づけられました」「安易に高額な治療を受ける前にしっかり調べ、信頼できる医師に相談するよう家族や友人にも伝えたい」といった声が聞かれました。